スイッチを入れると、地の底から湧き上がるような低い唸りが一斉にあたりを被った。背筋が冷たくなるような音だ。そして次に、何万という鳥の群れが翼を広げるようなパタパタパタという音が続いた。《…略…》七十八台のピンボール・マシーンが電気を吸い込み、そしてそのスコアボードに何千個というゼロを叩き出す音だった。音が収まると、あとには蜂の群れのようなブーンという鈍い電気音だけが残った。そして倉庫は七十八台のピンボール・マシーンの束の間の生に満ちた。一台一台がフィールドに様々な原色の光を点滅させ、ボードに精いっぱいのそれぞれの夢を描き出していた。

電源を切った電話は完全に死んでいて

（エンジンを切る）鍵を回した。 　車の振動が止み、途端に車内が静かになる。

レバー・スイッチを切った。まるで空気が抜けるようにピンボールの電気が消え、完全な沈黙と眠りがあたりを被った。

電球を捻（ひね）って外出の支度をした。

（織物）眼を近づけて見るとそれは見えるか見えぬ位の細かい彩糸（いろいと）や金銀の糸で、極く薄い絹地の目を拾いつつ、一寸大の唐獅子の群れを一匹毎（ごと）に色を変えて隙間（すきま）なく刺した物で、貴いものである事がシミジミとわかって来る。

ボタンを押して、電気系統に命令めいたものをして

クーラーの音がぶんぶんと部屋に響いている。

アパートのベランダでは何枚かのシャツが置き去りにされた孤児のようにビニールのロープにぐるぐると巻きついてしがみついていた。

石油ストーブのファンの音が部屋に響く