(食事に多量の睡眠薬を盛られる)全部たいらげた。萃(人名)はそのあいだビールをちびちびと飲みながら、小さな背中でテレビを見ていた。何かいやな感じがまだつきまとっていた。部屋が静かすぎる。夕方が長すぎる。テレビの音が空寒いほどよく響く。少しずれていた。気持ちと、時間の流れと、現実の空間。初めてあったときに比べて、萃が小さすぎる。 まさか本当に毒が入っていると、誰が思うだろうか。 次にかろうじて意識があったのは、「このひと、乱暴に運ぶなぁ。」というところだった。床をずるずる引きずられていた。体が重くて動かず、口も回らなかった。まぶたがまるで力ずくで閉じられているように見ようとすればするほどつぶってしまう。でも、私は何が起こっているのか見ようとしていた。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 ページ位置:78% 作品を確認(amazon)
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毒
睡眠薬
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前後の文章を含んだ引用
......ん、何の気なしに。」 私は答えた。「あなたの口から出ると、別の何かいいものの名前のようだった。」 萃は言った。 おいしかった。私はパンにバターをたくさんぬって、全部たいらげた。萃はそのあいだビールをちびちびと飲みながら、小さな背中でテレビを見ていた。何かいやな感じがまだつきまとっていた。部屋が静かすぎる。夕方が長すぎる。テレビの音が空寒いほどよく響く。少しずれていた。気持ちと、時間の流れと、現実の空間。初めてあったときに比べて、萃が小さすぎる。 まさか本当に毒が入っていると、誰が思うだろうか。 次にかろうじて意識があったのは、「このひと、乱暴に運ぶなぁ。」というところだった。床をずるずる引きずられていた。体が重くて動かず、口も回らなかった。まぶたがまるで力ずくで閉じられているように見ようとすればするほどつぶってしまう。でも、私は何が起こっているのか見ようとしていた。 必死で。「ごめんなさいね。」 と萃が小さい声でちょっと笑って言ったのが遠くで聞こえた。私の足首を持つ、食い込むような手の感触があった。そしてその手は笑っている......
単語の意味
体(からだ)
背中(せなか)
体・・・頭・胴・手足など、肉体全体をまとめていう言葉。頭からつま先までの肉体の全部。身体。体躯。五体。健康。体力。
背中・・・背の中央。背骨のあたり。動物の胴体の背骨のある側。胸や腹と反対の面で、両肩の間から腰のあたりまでの部分。背(せ)。背面。
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神経の脅えは薬力に和 められて、かえって、すぐその後は眠気を深めさせる。
岡本かの子 / 金魚撩乱
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ドロドロに崩れた白い液体のように、一切を休めて眠っている。
林芙美子 / 新版 放浪記
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まっくらな邸の中に炎の走るような赤い帯が解かれた。
浅田次郎 / 悪魔「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon
八十パーセントの事実と二十パーセントの省察というのが、日記記述についてのポリシーだ。
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
そのゴミは黴菌のようにごちゃごちゃと集団をなして
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
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