高原の宵闇は羽をひろげるように容赦なく押し迫って一切の形を黒の溶液 　に溶かしこんでしまう。

夕暮れの空を背景に犬と人間が歩いていく。はるか長い旅の始まり」 「映画にありそうですよね。ロードムービー」

太陽はこのとき、ちょうどはんのきの梢（こずえ）の中ほどにかかって、少し黄いろにかがやいて居（お）りました。

男の子の横顔が、かげりはじめた陽の光に染まっていた。ほっそりした輪郭が、揺らめいて見えた。

行き交う車の半分はヘッドライトを 点し、半分はフォグランプだけ、という時間帯だ。

曇った空に雨をふくんだ雲が船のようにゆっくり流れ

雨を含んだ真黒な雲が東に流れていく

烏賊が吹いた墨のような肌目のこまかい煙雲がもくもく湧き上った。

底光りのする雲母色（きららいろ）の雨雲が縫い目なしにどんよりと重く空いっぱいにはだかって

夕立の前ぶれを思わせる金箔の沈うつな雲

窓の外は満月だった。日付が変わろうとしていた。

（山から見下ろした夜明けの風景）山裾の靄は晴れ、 麓 の村々の電燈が、まばらに眺められた。 米子よなご の 灯 も見え、遠く 夜見ケ浜 の 突先 にある 境港 の灯も見えた。或る時間を置いて、時々強く光るのは 美保 の 関 の燈台に違いなかった。湖のような 中 の 海 はこの山の陰になっている為 未だ暗かったが、 外海 の方はもう海面に鼠色の光を持っていた。 　明け方の風物の変化は非常に早かった。 少時しばらく して、彼が振返って見た時には山頂のむこうから 湧き上るように 橙色 の 曙光 が昇って来た。それが見る見る濃くなり、やがて又 褪せはじめると、 四辺あたり は急に明るくなって来た。

朝日が山の端に顔を覗かせる

燃え立つようなオレンジ色に染まる地平線

階下の台所から夕方の美味（おい）しそうな匂いと音がしている。

灰鼠色の冬空のように険しい夕雲

黒い雲が建ち並んだ大きな建物の上に重苦しく 被いかぶさっていた。

今にも消えそうなほど細い月

長い並木道が、まるで延ばした帯皮のように、何処までも真直ぐに長く続いて、月夜の晩にはキラキラ光る。

空がうっすらと紗をかけたように白く濁る