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そのころから葉子はしばしば自殺という事を深く考えるようになった。《…略…》肉体の生命を絶 つ事のできるような物さえ目に触れれば、葉子の心はおびえながらもはっと高鳴った。薬局の前を通るとずらっとならんだ薬びんが誘惑のように目を射た。看護婦が帽子を髪にとめるための長い帽子ピン、天井の張ってない湯殿 の梁 、看護婦室に薄赤い色をして金 だらいにたたえられた昇汞水 、腐敗した牛乳、剃刀 、鋏 、夜ふけなどに上野 のほうから聞こえて来る汽車の音、病室からながめられる生理学教室の三階の窓、密閉された部屋 、しごき帯、……なんでもかでもが自分の肉を喰 む毒蛇 のごとく鎌首 を立てて自分を待ち伏せしているように思えた。
有島武郎 / 或る女(後編) ページ位置:87% 作品を確認(青空文庫)
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自殺願望・死にたい
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前後の文章を含んだ引用
......人一倍心の働く女だったけれども、そのころのような激しさはかつてなかった。しかもそれがいつも表から裏を行く働きかただった。それは自分ながら全く地獄 の苛責 だった。 そのころから葉子はしばしば自殺という事を深く考えるようになった。それは自分でも恐ろしいほどだった。肉体の生命を絶 つ事のできるような物さえ目に触れれば、葉子の心はおびえながらもはっと高鳴った。薬局の前を通るとずらっとならんだ薬びんが誘惑のように目を射た。看護婦が帽子を髪にとめるための長い帽子ピン、天井の張ってない湯殿 の梁 、看護婦室に薄赤い色をして金 だらいにたたえられた昇汞水 、腐敗した牛乳、剃刀 、鋏 、夜ふけなどに上野 のほうから聞こえて来る汽車の音、病室からながめられる生理学教室の三階の窓、密閉された部屋 、しごき帯、……なんでもかでもが自分の肉を喰 む毒蛇 のごとく鎌首 を立てて自分を待ち伏せしているように思えた。ある時はそれらをこの上なく恐ろしく、ある時はまたこの上なく親しみ深くながめやった。一匹の蚊にさされた時さえそれがマラリヤを伝える種類であるかないかを疑ったりした......
単語の意味
扱き帯(しごきおび)
肉体(にくたい)
扱き帯・・・長さのある布を適当な長さに切って、そのまま帯にしたもの。腰ひも。
肉体・・・肉から構成されている体。生きている人間の体。生身の体。
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他人を殺せないから自分をなくしてしまうのであり、自分を好きになれないからなにをしてもどんどん自殺という名前の沼におぼれていくのだ。
吉本 ばなな / 日常の力 文庫版あとがき「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
私も荒海に身を投げて自殺して、あの男へ情熱を見せてやろうかしらとも思う
林芙美子 / 新版 放浪記
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乳をむしりたいほど胸がいっぱいになって
吉川英治 / 銀河まつり
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(死後の肉体の変化が描かれた絵)皆殆ど同じ姿勢の寝姿で、只違うのは、初めから終りへかけて姿が変って行っている事である。 すなわち巻頭の第一番に現われて私を驚かした絵は、死んでから間もないらしい雪白 の肌で、頬や耳には臙脂 の色がなまめかしく浮かんでいる。
夢野久作 / ドグラ・マグラ
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