ある草や木が生きていられる、――最も自然ないい状態においてだね――場所というのはきまっているね。地面の上でさえあればいいというわけにはどうも行かんらしい――ある草は、北緯何度の地帯でしか生存できない。或は、赤道附近でしか生きられない。人工で温室に入れたり他の方法を用いたりして枯れないだけには保てないこともないさ。けれども、悲しいことには、そうされて生きる植物は実らない――繁殖できない。――ここが恐ろしい点だよ。人間も、どんな境遇にだって、ある程度までなら生理学上の命だけは失わずに生きられよう。が、地味が本ものでないと実らない。理想論だが、何だね、能うべくんば、人間互にその本ものの地味を作り、また与えたいもんだと僕は思うな。こういう話になったから率直に云うが――まあ、君らも――強いて一つの小さい、体に合わない植木鉢の中で揉み合っていなければならないこともなかろうさ
※備考※ 別れをすすめる
宮本百合子 / 伸子 ページ位置:84% 作品を確認(青空文庫)
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失恋・恋人と別れる
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前後の文章を含んだ引用
......めっから諒解し合っていることなんだから割に造作なかろう、もっと、こりゃ根だね。――根が大事だよ」 阪部は、しばらく考え続けた。 「また植物をかつぎ出すが、何だね、ある草や木が生きていられる、――最も自然ないい状態においてだね――場所というのはきまっているね。地面の上でさえあればいいというわけにはどうも行かんらしい――ある草は、北緯何度の地帯でしか生存できない。或は、赤道附近でしか生きられない。人工で温室に入れたり他の方法を用いたりして枯れないだけには保てないこともないさ。けれども、悲しいことには、そうされて生きる植物は実らない――繁殖できない。――ここが恐ろしい点だよ。人間も、どんな境遇にだって、ある程度までなら生理学上の命だけは失わずに生きられよう。が、地味が本ものでないと実らない。理想論だが、何だね、能うべくんば、人間互にその本ものの地味を作り、また与えたいもんだと僕は思うな。こういう話になったから率直に云うが――まあ、君らも――強いて一つの小さい、体に合わない植木鉢の中で揉み合っていなければならないこともなかろうさ」 佃が歯の間から呟いた。 「理想はそうだろう――しかし私にはできません――そういうもんじゃない」 「何が――伸子さんの云われるようなことかい?」 「そうです」 「……......
単語の意味
体(からだ)
体・・・頭・胴・手足など、肉体全体をまとめていう言葉。頭からつま先までの肉体の全部。身体。体躯。五体。健康。体力。
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(恋の終わりの予感)2人はもう終わるかもしれない……と思った。やることがない。のびてゆく方向が閉ざされている。ガラスケースのなかの植物のように、助け合っていてもお互いがお互いに救いや解放感を感じさせない。 闇 の中で傷をなめあったり、老夫婦のように寄り添って暖をとったり。
吉本 ばなな / とかげ「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
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唇と唇が溶接したようにしっかりとくっつく
井上 ひさし / モッキンポット師ふたたび amazon
彼と言葉を交わした瞬間、突然世間に色がついたので私はびっくりしていた。
吉本ばなな / うたかた「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
(服を脱がされる)するりと尻が剥き出しにされる。上半身もたくし上げられて、腕の付け根と首に拘束衣のようにパジャマの上着が絡む。《…略…》脚の下半分と首から上に絡みつくパジャマを、陣治は取り去ろうともしない。惨めなトルソーだ。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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