(犬を角材で何度も殴り付ける)さらに犬を打ちつけていた。 「ふんんんっ!」 興奮した気張り声が彼の鼻孔あたりでくぐもっていた。血走った眼を見開き、歯をぐっと食いしばって、強烈な憎悪をぶつけるように犬を殴打していた。鋭い一撃が犬の頭部を直撃し、ドーベルマンは異常な鳴き声を上げて、痙攣にも似た動きで七転八倒した。 それでも武内は打つ手を緩めなかった。鬼気迫る気張り声を発するのみで、黙々と角材を振り下ろした。《…略…》角材が折れたところで、武内の手はようやく止まった。ドーベルマンはぐったりとしていた。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:19% 作品を確認(amazon)
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殴る・ひっぱたく
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前後の文章を含んだ引用
......けて、それをドーベルマンの背中に打ち下ろした。 ドーベルマンが甲高い鳴き声を上げた。絡みつくような犬の気配が離れ、雪見は家の外壁に身を寄せた。 武内は庭の中央でさらに犬を打ちつけていた。「ふんんんっ!」 興奮した気張り声が彼の鼻孔あたりでくぐもっていた。血走った眼を見開き、歯をぐっと食いしばって、強烈な憎悪をぶつけるように犬を殴打していた。鋭い一撃が犬の頭部を直撃し、ドーベルマンは異常な鳴き声を上げて、痙攣にも似た動きで七転八倒した。 それでも武内は打つ手を緩めなかった。鬼気迫る気張り声を発するのみで、黙々と角材を振り下ろした。 雪見はその光景を見ながら、自分に今張りついている戦慄は何に対するものなのか、分からなくなってきていた。 角材が折れたところで、武内の手はようやく止まった。ドーベルマンはぐったりとしていた。 その夜、武内は雪見が病院から帰ってくるのを待っていたかのように梶間家を訪れ、青ざめた顔をして何度も頭を下げた。 ドーベルマンは明日にでも保健所送りにすると武内......
単語の意味
鼻孔(びこう)
血走る(ちばしる)
くぐもる
鬼気(きき)
犬・狗(いぬ)
鼻孔・・・鼻の孔(あな)。鼻の穴。「孔」は、訓読みで「あな」と読める。
血走る・・・不眠や興奮などで、眼球が充血する。
くぐもる・・・声がこもる。声が物の影から出てきたようにハッキリしない。
鬼気・・・鳥肌が立つほど不気味な気配。恐ろしい雰囲気。
犬・狗・・・1.イヌ科の哺乳動物。大昔から人間に飼育されてきた家畜。従順で賢く、家やヒツジの番をしたり、犯人捜査や目や耳の不自由な人の導いたりもできる。
2.(あちこちとかぎ回るところから)他人の秘密などをかぎ回って報告する者。スパイ。まわしもの。間者(かんじゃ)。
2.(あちこちとかぎ回るところから)他人の秘密などをかぎ回って報告する者。スパイ。まわしもの。間者(かんじゃ)。
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殴る・ひっぱたくの表現・描写・類語(攻撃のカテゴリ)の一覧 ランダム5
空腹のあまり力が入らず、弱々しく放った僕のパンチは、まるで夢の中で打つスローなものだった。
劇団ひとり / 陰日向に咲く amazon
パンチを繰り出すと見せかけ、空を切って放たれたのは回し蹴りだ。
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
窒息しないのだろうか、と思ってしまうくらいの、連続した殴り方
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
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太刀が身に食い入るたびに、まりをたたくような、まるくこもった音が立つ
司馬 遼太郎 / 最後の将軍 amazon
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