TOP > 人物表現 > 思考・頭の中の状態 > 疑問・不思議に思う
TOP > 暮らしの表現 > 事件・事故 > 証拠をつかむ・アリバイを崩す
札幌駅の河西も、東京駅の女中も、安田に作られた目撃者である。安田自身がこの情死事件には不在であるという証明のためにである。 札幌、東京の二つの駅でおこなわれた安田の作為の行末は、交差の点を九州博多の近郊香椎に結んでいる。すべて彼がそこにいなかった、という結像である。 ここまで考えてきて、三原は、安田辰郎がかならずそこにいたという自信を強めた。作為が加わっている以上、その結像は虚像である。実像は反対に転倒している。《…略…》彼は事件に不在どころか、確固として存在していたのだ。安田の努力を検討すると、この実像を反対に結像して見せることに指向している。
松本 清張「点と線 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:62% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
疑問・不思議に思う
証拠をつかむ・アリバイを崩す
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......「小雪」に遊びに来て姿を見せている。何か念を押しているようなやり方ではないか。 四分間の偶然の目撃は、もはや、偶然でなく、必然であった。安田の作った必然である。札幌駅の河西も、東京駅の女中も、安田に作られた目撃者である。安田自身がこの情死事件には不在であるという証明のためにである。 札幌、東京の二つの駅でおこなわれた安田の作為の行末は、交差の点を九州博多の近郊香椎に結んでいる。すべて彼がそこにいなかった、という結像である。 ここまで考えてきて、三原は、安田辰郎がかならずそこにいたという自信を強めた。作為が加わっている以上、その結像は虚像である。実像は反対に転倒している。一月二十日、午後十時から十一時の間、佐山とお時との情死の現場、九州香椎の海岸に安田辰郎はかならず立っていた。そして、何かしていた! 何かしていた──何をしていたか、今はまだわからない。要するに彼はそこに、その日、その時刻にいたのだ。佐山憲一がお時と、毒をあおいでたおれるのを、安田の目は見つめていたに違いない。彼は事件に不在どころか、確固として存在していたのだ。安田の努力を検討すると、この実像を反対に結像して見せることに指向している。 理屈の組み立てはまさにそうだった。しかし、その想定から出発すれば、安田は翌朝の七時二十四分の急行で博多を東に出発しなければならない。その《さつま》は京都に二十......
単語の意味
女中(じょちゅう)
女中・・・中で(=住み込みで)働く女性。旅館や料亭、他所の家庭などで住み込みで働く、お手伝いさん。
ここに意味を表示
疑問・不思議に思うの表現・描写・類語(思考・頭の中の状態のカテゴリ)の一覧 ランダム5
幻を見たようなあやしい気分が胸をかすめる
藤沢 周平 / 三屋清左衛門残日録 amazon
するとそのとき、ひとつの疑問が頭のどこかから 忽然と湧き出てくる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
証拠をつかむ・アリバイを崩すの表現・描写・類語(事件・事故のカテゴリ)の一覧 ランダム5
安田の主張の崩壊が決定的となる!
松本 清張「点と線 (新潮文庫)」に収録 amazon
証拠という矢じりが一つでもあれば、この男の心臓を射抜いてやれるのに。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「思考・頭の中の状態」カテゴリからランダム5
(警察の酒田から昔の恋人が行方不明と聞かされて)いきなり真空状態のカプセルに封じ込められてしまう。酒田の声は聞こえている。行方不明。失踪届。停止した頭のどこかに、それらの言葉が意味も成さないまま引っかかっている。行方不明? 失踪届? 行方不明? 失踪届?――、誰が? 黒崎が?
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
ふるさとにあこがれるように堪えがたい希望
石川 達三 / 花のない季節 amazon
「事件・事故」カテゴリからランダム5
仮説を粉砕する絶対の槌
松本 清張「点と線 (新潮文庫)」に収録 amazon
中心にグングン捲き込まれて行く
夢野久作 / ドグラ・マグラ
同じカテゴリの表現一覧
思考・頭の中の状態 の表現の一覧
事件・事故 の表現の一覧
人物表現 大カテゴリ