どうでもいいような日用品が、気づけば一〇年も二〇年も使われている。資源を大切にするだとか使い込んで味を出すとかいうのとも違い、樹脂の劣化したうがい用コップやら座布団やマグネットなんかが、広い家の中で永い間、ほとんどそのことを誰にも意識されずにただそこに在るのだ。日常の亀裂の中に、過去が平然と入り込んでいる。
羽田 圭介「ミート・ザ・ビート (文春文庫)」に収録 ページ位置：18% 作品を確認（amazon）
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物持ちがいい
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前後の文章を含んだ引用
......レタスといった朝食を摂った。 古びたビニールのテーブルクロスは劣化し完全に黄色くなっていて、醬油の染みはいくら拭ってもとれない。こういうところが、彼は嫌だった。どうでもいいような日用品が、気づけば一〇年も二〇年も使われている。資源を大切にするだとか使い込んで味を出すとかいうのとも違い、樹脂の劣化したうがい用コップやら座布団やマグネットなんかが、広い家の中で永い間、ほとんどそのことを誰にも意識されずにただそこに在るのだ。日常の亀裂の中に、過去が平然と入り込んでいる。 二階の六畳間が彼に割り当てられた部屋で、畳の空間にパイプベッドを置いている。実家から持ってきたのはそれとミニコンポや服くらいで、あとはこの家の倉庫にしまわれて......
単語の意味
平然（へいぜん）
平然・・・慌てることなく落ち着きはらっているさま。全く動じていないさま。「然」は他の語の後ろに付いて、状態をあらわす字。
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