窓から差し込む光りが描く線

登ってゆく石段の色が、こまかく灰が降ったように見えるのは、木かげを洩れる弱日の色だ。その光はあまりにも弱いので、汚れた灰のように見えるのだ。

大きな赤い花が陽にすけて揺れていた。

（庭のデッキ・チェアで目を閉じて思い出そうとする）猫の姿を頭に思い浮かべようとしたが、実際に僕が思い浮かべることができるのは、逆光を浴びた写真のようなひどく漠然とした猫の像にすぎなかった。強い太陽の光が瞼をとおり抜けて僕の暗闇を不安定に拡散させていたし、それに僕はどれだけ努力しても猫の姿を正確に思いだすことができなかったのだ。

赤みがかったぎらぎらした太陽が白樺の雑木林を踊るように照らしている。

窓越しに差し込んでくる初夏の日射し

静かな蒼空は、澄んで、幅広い白金のような日光を漲らして

暮れていく空を背景に桜は輝いていた。夕陽を受け、花は淡い金色に縁取られ、風が吹くたびに花びらではなく光が零れ散っていた。

（窓に）流れ込むネオンの余光が、部屋の中を赤く青く交互に染めていく。

曇っているせいか、昼間だというのに南側のマンションの窓の幾つかに灯りが点っている。