人間の悩みを原料として、いつかそれを見事に再生産なさる

文筆業

（詩人）詩人は共喰いの共産党だ。持ってるものは平等につかう。借金もそれ相当なもの。手近な目的はただ食べる事に追われるばっかり。人命終熄（しゅうそく）の一歩手前でうろうろしているばかりなり。天才は一人もいない。自分だけが天才と思っているからよ。それ故、私たちはダダイスト。只何となく感じやすく、激しやすく、信念を口にしやすい。何もないくせに、まずここんところから出発してゆくより仕方がない。

（常に考えている）文字が頭の芯にいつも明滅している

（詩人）詩は印刷機械のようにいくつでも書ける。只、むやみに書けると云うだけだ。

樫の棍棒を持った士官が三人出迎えに来ていて、「これからお前たちを徹底的に締めあげるから、その覚悟をしていろ」という挨拶をした。ちょっと暴力団に盃をしに来たような気持がした。

（殺し屋への依頼方法）ウエイターがいるカウンターの周りにはテーブルがいくつかある。とにかく一番奥の席へつけ。そこには「予約中」の札が立っているが無視していい。ウェイターがメニューを持ってくるが内容を確認する必要ない。そのまま「タナトス」というカクテルをオーダーしろ。《…略…》それはメニューには載っていないカクテルだ。《…略…》これが依頼の合図となる。

（看護婦）死の灯影（ほかげ）の廻りを飛び交う蛾のごとし

いかにもマスコミという感じの、しつこそうな顔をしている

誘導棒の取っ手についている発光スイッチをオンにすると、棒全体が赤く点滅する。肘を軸に、右へ左へと振り回した。棒状の赤い光の残像が虚空を行き交いし、彼は腕の動きだけで次々とゲートに入ってくる車、ゲートから出てゆく車を誘導する。 　陽も落ちてだいぶ空が暗くなり、夜の闇中に浮かぶ赤い軌跡は存在感を増した。棒の動き一つでどんな大きな車も彼の指示に従い、出入りする。