ガラスのドアを開けて中に入ると、大音量の音楽が流れていた。メロディがあるのかないのか分からないような曲で、若い男がかったるそうに歌っている。思わず耳をふさぎたくなる、まったく相容れない世界だった。

会話を、雨音と、部屋に沈む静かな音楽の間で淡々と交していた。

（聴き入る、富樫雅彦と菊地雅章の美しいデュオのＣＤ）菊地のピアノだけで演奏される破格の〈All The Things You Are〉が始まったところで、しばらくその場から動きたくなくなった。 　時間が、ゆっくりと解体されてゆくようなテンポだった。旋律が、一滴ずつ、澄んだしずくとなってしたたり、静まり返った室内に、幾重にも波紋を広げていった。 　城戸は、音楽そのものというより、その音の予感と余韻との融け合いの中で息を潜めて、クリスマス・ツリーの電飾が、一定のパターンで変化してゆく様を眺めた。

（ブティックのBGM）時を 倦うむようなチェロの音が、しめやかに流れていた。

（音楽鑑賞）美声のヴィブラートが、一本の蠟燭の明かりの揺らめきのように、彼女の存在を灯していた。 　段々と人心地がついてくるようだった。

レコードをターンテーブルに載せる

ぱちぱちという音を立てる古いレコード

（レコードをターンテーブルから取り上げて、）盤に指紋をつけないように注意しながら紙袋に収め、その紙袋をレコード・ジャケットに収めた。まるで眠りかけている子猫を寝床に移すみたいにそっと、慈愛深く。

ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』のレコードをターンテーブルに載せ、オートマチック?プレイのボタンを押した。《…略…》ターンテーブルが一分間に33回転のスピードでまわり出し、トーンアームが内側に向けて動き、針がレコードの溝をトレースする。

（音楽が終わる）レコードが終了し、針が自動的に上がり、アームが水平に動いてアームレストが戻った

クーラーの送風目盛りを「５」から「３」に下げ

ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』のレコードをターンテーブルに載せ、オートマチック?プレイのボタンを押した。《…略…》ターンテーブルが一分間に33回転のスピードでまわり出し、トーンアームが内側に向けて動き、針がレコードの溝をトレースする。

食事に使うテーブルクロスやナフキンは、一週に一度大きなタライの中で煮るのだった。赤ちゃんのうぶ湯ぐらい使わせられるほど大きい洗たくタライによごれものを入れ、石けんの粉をふりかけて、上からお湯をひたひたになるまでそそいで火にかけ、ぐつぐつ中火で20分ぐらい煮る。 ときどき長い棒で上からつついたり、よごれものをひっくりかえしたりして、それがすむと水洗いするのだが、不思議なほど真白に、きれいによごれがおちていた。

近所で、ラジオがやかましく煎りつくように鳴っている。

（ビデオデッキから）押し出されたビデオテープは巨大な舌に似ている。デッキは、（タイマー部分の「0000」の点滅が）ウィンクしながら、あっかんべーをしているように見えた。

ぴちゃぴちゃと川波の音が耳につく

他の教室の課業も皆一度に終った。すると今まで室内に密封された八百の同勢は鬨（とき）の声をあげて、建物を飛び出した。その勢（いきおい）と云うものは、一尺ほどな蜂（はち）の巣を敲（たた）き落したごとくである。

風が出て来てまだ刈っていない草は一面に波を立てます。

ネズミほどの物音

貯水タンクに叩きつける雨の音はまるで太鼓の音のよう