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激辛よりも一段からい
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からい(辛味)
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(激辛三十倍カレー)例の別添え銀製風容器に入れられており、十倍も、三十倍も、色に変わりはない。ごくふつうの黄土色カレーで、三十倍も特に獰猛な面影はない。  いきなり三十倍からいくことにした。  一口目。特にどうということもなく、酸味の利いたやや辛めのカレー、という印象。二口目も平穏無事に過ぎた。三口目から突如、三十倍の猛攻が始まった。辛さというものは、最初油断させておいて、突然強烈なカウンターブローを放ってくるようだ。  まず口の中が熱湯を含んだようになり、次に舌全体が針で突つかれたように痛くなった。唇がたちまちタラコになった。各地に被害が出始めたのである。とたんに汗関係機関がフル操業になったらしく、顔面および首筋方面に点在する何十万という毛穴から汗がドッと噴き出てきた。舌全体にドシンとくるしぶとい辛さではなく、点在的にチクチク、トゲトゲとくる陰険な辛さである。  熱感と痛感で口を閉ざしていることができない。口中内壁とカレーとの接触を阻むために、全員いっせいに「アヒ、アヒ」と口を開け、「ホレハ、ドーモ、ハフガニ、フゴイ」(これは、どうもさすがにすごい)などと言い合って、「ミフ、ミフ」(水、水)ということになる。そうしてゴクゴク水を飲んで、スプーンを放り出し、イスの背にぐったりもたれてとりあえず摂取を中断し、改めて恐怖のカレー汁をしみじみ見つめる。
東海林 さだお「タコの丸かじり」に収録 amazon関連カテからい(辛味)カレー
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