手術室は思っていたよりもずっと素っ気ない小部屋で、壁も天井も床も機材も全部セメント色だ。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:52% 作品を確認(amazon)
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手術(室)
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......にすっきりしている。そして暗い。ホールの隅は薄い闇にぼやけている。電灯の半分はスイッチを切られている。わたしは学生たちに押されるようにして、そこを通り過ぎた。 手術室は思っていたよりもずっと素っ気ない小部屋で、壁も天井も床も機材も全部セメント色だ。ざわざわと立ち働く多くの種類の人間たちは、誰もわたしたちのことを気にとめない。 手術室の隣の詰所の天井に、人間一人分くらいの穴がぽっかり開いていて、そこに狭くて......
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手術(室)の表現・描写・類語(イベントのカテゴリ)の一覧 ランダム5
緇い俎板(まないた)のような簡単な手術台
加能 作次郎 / 世の中へ amazon
(チョコレート嚢胞の手術)指先でつまんで、口の中で溶かしたくなるような言葉だ。 しかし、メスの刃の下からあふれ出てきた液体は、言葉のかわいらしさとは正反対に、吐き捨てたくなるような不快な色をしている。血液が腐敗した色だ。ビニールの手袋の上にとろりと広がって、今までに溜め込んできた体温や体臭を一遍に放り出している。その傍で卵巣はすっかり萎びている。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
床には埃と手術中の血をたえず洗い落す水が軽い細かな音をたてて流れている。その水が、天井につるした大きな無影燈の光に反射して、手術室全体を燃えた白金の炎のように輝かせていた。その中で浅井助手も看護婦たちもまるで水の中の海草のようにゆらゆらと動いている。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
手術室は九階にあって、専用のエレベーターでしか降りられないようになっていた。エレベーターの扉が開いた瞬間、そこには病棟や研究棟とはどこか違った寒々しい雰囲気が広がっていた。まずエレベーターホールには何もない。ソファーも公衆電話もベンジャミンの鉢植もない。頼りないくらいにすっきりしている。そして暗い。ホールの隅は薄い闇にぼやけている。電灯の半分はスイッチを切られている。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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「イベント」カテゴリからランダム5
グラスを持っていないと、いかにもパーティーから弾き出されてしまった人のようで、置いてきたのを後悔した。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
戦場は雨を叩き、敗走する味方と、それを追う敵の鬨の声、そして銃声とが、真っ暗い平原の至るところから不気味に湧き起こっていた
井上靖 / 幽鬼「異域の人・幽鬼」に収録 amazon
笛の音が晴れわたった空に鋭く響いている。打ち鳴らされる太鼓も聞こえる。 夏祭りのはじまりだ。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
手術室は思っていたよりもずっと素っ気ない小部屋で、壁も天井も床も機材も全部セメント色だ。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
「病院」カテゴリからランダム5
消毒液と見舞いの花束と小便と布団の匂いがひとつになって病院をすっぽり覆って、看護婦がコツコツと乾いた靴音を立ててその中を歩きまわっていた。
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
車椅子に座った子供達が黄色いボールを投げ合って中庭で遊んでいる。三人、みんな首がとても細い。捕球しそこなうと一人の看護婦がボールを拾う。一人よく見ると手首から先がツルンとして何もない子供がいて、彼は看護婦がそっと浮かせたボールを腕で打ってゲームに参加している。打ったボールは必ずよそへ逸れるが、子供は歯を見せて笑っていた。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
(小さな病院の)昔風の 磨りガラスの 嵌った窓口
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
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