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いずれにしても、弟はもういない。わたしはこの事実を何回も確認させられた。大学から授業料滞納の通知が届いた時、弟のパジャマを洗濯してアイロンをかけてクローゼットの奥にしまった時、弟のいた病室の扉に別の名札が差し込まれているのを見た時。そのたびにわたしは、「もうわかった。わかったから、そっとしておいて。」とつぶやいた。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:4% 作品を確認(amazon)
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喪失感(大切なものを失う)
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......気、休学、帰京、闘病生活、これらの重大でしかも突然の重荷を、弟は冷蔵庫の中身をゴミ袋に捨てるように、サラリとやりすごすことができたら、と思っていたのだろうか。 いずれにしても、弟はもういない。わたしはこの事実を何回も確認させられた。大学から授業料滞納の通知が届いた時、弟のパジャマを洗濯してアイロンをかけてクローゼットの奥にしまった時、弟のいた病室の扉に別の名札が差し込まれているのを見た時。そのたびにわたしは、「もうわかった。わかったから、そっとしておいて。」とつぶやいた。 弟はあの病室のあのベッドの上で、いつでも完璧に穏やかで、完璧に優しかった。弟の首筋は完璧に滑らかで、弟の吐く息は完璧に透明だった。だからよけいに、哀しい。わた......
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吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
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