遠景の、羞恥心のない女の背のようなくぼみのある丘

広い谷を隔てて向うに見える小高い岡（おか）が、怪獣の背のように黒く長く横たわっていた。

（丘の）ところどころに、雑木林が島のように浮かび

私達のいる丘からは島中がみおろせる。風が遠くの街やジャングルを渡っていく様子がわかるほどクリアーな眺めだった。

（丘の稜線は）柔和な曲線を描いている

田畑の上を、電信柱や人や森が、スイ、スイ、来ては飛び去る。

草原は砂丘のようにゆるゆかに起伏している

一人ゆっくり横柄に自動車のヘッドライトの中を歩いて自動車の警笛を焦立たせた。

（タクラマカン砂漠）あそこの砂はパウダー状で軽くて実体がなくて、それがもう四方八方見渡す限りどこまでも広がってる。自分の身体なんてあっという間に砂に同化して風に飛ばされてしまいそうな気がするんだ。あの砂漠では誰でも死について考えてしまう。というより、皮膚がひりひりするくらいに直接死を感じてしまうんだ。絶対零度の孤独って吐き気にちょっと似てるよね――

堤の上を冷たい風が吹いて行く。