蟬の命ほどもない、短い間

たった十分よ。十分使ったからってべつに致命的な損失ってわけじゃないでしょ？

現代医学に依ると普通人の平静な呼吸の約十八、もしくは脈搏の七十幾つを経過する時間を標準として一分間と定めている。

すべての平和と幸福とは、短い人生の中にあって最も短い。それはちょうど、秋の日の障子の日向の上にふと影を落す鳥かげのようである。

蝉の命ほどもない短い期間

凪のような平穏な日々

苦労もしたけれど、今はそれを十分補ってあまりある人生

誰にも煩わされる事なく、越年する草木のように黙って暮したい。

僕の人生なんて樫の木のてっぺんのほらで胡桃を枕にうとうとと春をまっているリスみたいに平穏そのもの

平穏な毎日を送る

（信じられない現実）カフカの小説を香港で映画化したような現実

地球の北端――そこでは人の生活が、荒くれた自然の威力に圧倒されて、痩地（やせじ）におとされた雑草の種のように弱々しく頭をもたげてい

生活が、かびのようにつまらなくなった

世間に住みつく根を失って浮草のように流れている。

小さな蝸牛（かたつむり）のような生活を営んだ

何度か二人とも時計を確認して、遅い時間になりつつあることに気づいていた。

鉛のように重苦しい集計時間が過ぎていく。

一時間にも感じられた数分の後、

ゆっくりと無感動に、牛が草を食（は）むように仕事をする

貸ビルが建っていて、屋上には電気冷蔵庫の巨大な広告パネルが取り付けられていた。エプロンをつけた30歳ばかりのいかにも貧血症といった感じの女が前かがみになって、それでも楽しそうにドアを開けているおかげで、僕は冷蔵庫の中身をのぞき見ることができた。 　フリーザーには氷と１リットル入りのバニラ・アイスクリーム、冷凍海老のパック、二段めには卵のケースとバターにカマンベール・チーズ、ボーンレス・ハム、三段めには魚と鶏のもも肉、一番下のプラスチック・ケースにはトマト、キュウリ、アスパラガス、レタスにグレープフルーツ、ドアにはコカ・コーラとビールの大瓶が３本ずつ、それに牛乳のパックが入っていた。 　僕は彼女を待つ間、ハンドルにもたれかかったまま冷蔵庫の中身を平らげる順番をずっと考えてみたが、何れにせよ１リットルのアイスクリームはいかにも多すぎたし、ドレッシングの無いのは致命的だった。