クラブを振り上げ、足元のボールめがけて弧を描いて振り下ろす。

鉄アレイのような形をしたバンカー

打球はさながら悪魔の背に乗ったように思い通りの位置へ飛んで行く。

ゴルフクラブを手にとって刀のようにまっすぐに前に伸ばしてそれをじっと眺めている

木の幹と幹の間に緑のネットを張って、ゴルフの練習をしている。クラブがヒュッと空を切ると真ん中の的を目がけてボールが飛んでいく。

西嶋はレーンと向かい合い、ボールを構えたまま、動かなかった。狙いを定めているのか、コースをイメージしているのか、黙って、「ボウリングを発明した人の彫像」さながらにボールを構えた恰好で固まったままだった。

洲の中の環虫類（かんちゅうるい）を糸にたくさん貫（つらぬ）いて、数珠輪のようにして水に垂らす。蘆の根方に住んでいる小鰻（うなぎ）がそれに取りつく、環（わ）をそっと引き上げて、未練に喰い下って来る小鰻を水面近くまでおびき寄せ、わきから手網（てあみ）で、さっと掬（すく）い上げる。

レーンの右寄りの場所から転がり出したボールは、ガーターの溝と平行に、綱渡りを楽しむかのように、まっすぐ転がった。床を走るボールは、ほどなく、急に肩の力を抜くように、方向を変え、左へと曲がった。 　いったん、回転を止めるような素振りを見せると、直線方向へ、つまり、ピンの正面へと、向かった。まるで、そこへのレールが敷かれていたかのように、ボールは一番ピンと二番ピンの間に、吸い込まれる。 　弾いた。ボールはピンを飛ばし、自ら弾けた。叫喚するような音が、レーンの先から響いた。

並んで釣り糸をたれていた。

誰もが自分の手元を不機嫌そうに見つめている。