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胸の中の思いがいつも言葉からはみ出してしまう《…略…》知っている言葉をどんなに組み合わせても、気持ちとぴったりにはならない。本を読み、辞書をひいても、ああこれなんだ、という言葉には出会えない。ひとに説明するのはもちろん、自分で自分の気持ちを確かめようとしても、言葉では覆いきれないところが必ず残って、そこがいちばんたいせつなものなんだとわかっているのに、どうしても言葉が届かない。
重松 清「流星ワゴン (講談社文庫)」に収録 ページ位置:67% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......」「正直に言っていいんだぞ」「……だから、嫌いっていうか……そういうんじゃなくて……っていうか……」 うつむいていても、苦しそうな顔をしているのは見てとれる。 胸の中の思いがいつも言葉からはみ出してしまう、そんな時期は僕にもあった。いまの広樹よりもう少し大きくなった、中学生や高校生の頃だ。知っている言葉をどんなに組み合わせても、気持ちとぴったりにはならない。本を読み、辞書をひいても、ああこれなんだ、という言葉には出会えない。ひとに説明するのはもちろん、自分で自分の気持ちを確かめようとしても、言葉では覆いきれないところが必ず残って、そこがいちばんたいせつなものなんだとわかっているのに、どうしても言葉が届かない。「もういいよ」 僕は静かに言った。「わかるから、なんとなく」と、もっと静かに。 広樹の反応はなかった。「噓じゃないぞ」と念を押した。険しい顔をしていなければなら......
単語の意味
胸(むね)
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