無口だった。レコードはもう終っていたので、部屋にはひさしに落ちる雨の音と三人が肉を嚙む音の他には何もなかった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置:42% 作品を確認(amazon)
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黙る・沈黙
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......でいる。僕がビールを飲み終え、ハンス゠マルティン・リンデがヘ長調のソナタの最後の一音を吹き終える頃に食事の仕度が出来上がった。僕たち三人はその日の夕食では珍しく無口だった。レコードはもう終っていたので、部屋にはひさしに落ちる雨の音と三人が肉を嚙む音の他には何もなかった。食事が終わると双子は食器を片付け、二人で台所に立ってコーヒーを入れた。そしてまた三人で熱いコーヒーを飲んだ。生命を与えられたように香ばしいコーヒーだった。一人が......
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黙る・沈黙の表現・描写・類語(声・口調のカテゴリ)の一覧 ランダム5
底なし井戸に小石を投げ込んだような沈黙がしばらく続いた。石が底につくまで三十秒かかった。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
話が途切れてしまい、邦彦が何か話すことはないかと考えていると、まち子がぽつんと言った。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
柿村はしばし黙りこんだ。わたしは辛抱強く次の言葉を待った。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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「声・口調」カテゴリからランダム5
飛行機を降り立って以来、君は周囲にあふれる言葉がどれもこれも不思議な風合いを帯びているのに気づいていたが、そのグループの声にはどうしても素通りできない誘惑を感じた。森に潜む小動物たちの鳴き声のように、一つ一つバラバラのようでありながら、彼らだけに通じる規則で互いに溶け合い寄り添い合って、暗号めいた調和を生み出していた。君が慣れ親しんでいる言葉とは明らかに異なる抑揚と勢いを持ち、予測できないリズムを刻んだ。
小川 洋子 / 乳歯「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon
「それが、わたしに話したかったこと?」 早苗は、その一言に反発し、押し返そうとする力が余って、これまで言い淀んでいた言葉を、とうとう口にした。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
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