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次第に楽になってくる。苦しいのだかありがたいのだか見当がつかない。水の中にいるのだか、座敷の上にいるのだか、判然しない。どこにどうしていても差支 えはない。ただ楽である。否 楽そのものすらも感じ得ない。日月 を切り落し、天地を粉韲 して不可思議の太平に入る。吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。太平は死ななければ得られぬ。
※備考※ 溺れて死ぬ
夏目漱石 / 吾輩は猫である ページ位置:100% 作品を確認(青空文庫)
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穏やかに死ぬ(老衰・大往生)
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前後の文章を含んだ引用
......るものを出ようとするのは無理だ。無理を通そうとするから苦しいのだ。つまらない。自 ら求めて苦しんで、自ら好んで拷問 に罹 っているのは馬鹿気ている。 「もうよそう。勝手にするがいい。がりがりはこれぎりご免蒙 るよ」と、前足も、後足も、頭も尾も自然の力に任せて抵抗しない事にした。 次第に楽になってくる。苦しいのだかありがたいのだか見当がつかない。水の中にいるのだか、座敷の上にいるのだか、判然しない。どこにどうしていても差支 えはない。ただ楽である。否 楽そのものすらも感じ得ない。日月 を切り落し、天地を粉韲 して不可思議の太平に入る。吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。太平は死ななければ得られぬ。南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい。
単語の意味
不可思議(ふかしぎ)
不可思議・・・1.数の単位のひとつ。10の64乗。古くは、10の19乗。元は仏教用語で「測り知れないもの」という意味。
2.人の理解を超えた、測り知れないもの。言葉では表現できないもの。不思議。異様。
2.人の理解を超えた、測り知れないもの。言葉では表現できないもの。不思議。異様。
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まるで列車が少しずつ速度を落として停止に向かうときのように(生命力の推移は少しずつ下がっていく。《…略…》)父親という列車は徐々にスピードを落とし、惰性が尽きるのを待ち、何もないがらんとした平原の真ん中に静かに停止しようとしている。ただひとつの救いは、車内にはもう、一人の乗客も残ってはいないということだ。列車がこのまま停止しても、そのことで苦情を申し立てる人間はいない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
消えかかる松明 の火のように、静かに息をひきとった
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