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「久しぶりだね。僕のこと憶えてる?」 「もちろんよ。」 わたしは即座に答えることができた。彼が不思議なくらい昔と変わっていなかったからだ。髪の流れ具合や、視線の動かし方や、首筋から肩にかけての曲線が、わたしの中に残っていたイメージときれいに重なり合った。それでいて彼はちゃんと大人になっていた。背はわたしよりずっと高くなっていたし、指は骨っぽくたくましくなっていたし、きちんとネクタイを締めていた。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:18% 作品を確認(amazon)
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面影
再会・再び出会う
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前後の文章を含んだ引用
......をかけた。あたりの静けさに包み込まれたような穏やかな声だったので、わたしはそれほど驚かなかった。振り向くと、喪服を着たK君がいた。彼も、中学時代の同級生だった。「久しぶりだね。僕のこと憶えてる?」「もちろんよ。」 わたしは即座に答えることができた。彼が不思議なくらい昔と変わっていなかったからだ。髪の流れ具合や、視線の動かし方や、首筋から肩にかけての曲線が、わたしの中に残っていたイメージときれいに重なり合った。それでいて彼はちゃんと大人になっていた。背はわたしよりずっと高くなっていたし、指は骨っぽくたくましくなっていたし、きちんとネクタイを締めていた。「K君こそ、よくわたしのこと覚えていてくれたわね。」「うん。」 彼は、目を伏せながらうなずいた。 わたしは中学生の頃、ひねくれたかわいげのない子供だった。クラス......
単語の意味
視線(しせん)
首筋・頸筋(くびすじ)
背(せ)
視線・・・目と、目が見ようとしているモノとを結ぶ線。目が見ている方向。見つめている方向。
首筋・頸筋・・・首の両側から後部にわたる部分。首の後ろ側の部分。項(うなじ)。襟首(えりくび)。首根っ子・頸根っ子(くびねっこ)。
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面影の表現・描写・類語(人の印象のカテゴリ)の一覧 ランダム5
そこに写っている三つばかりの幼児の面影から、アトリエに眠っていた少女の印象をたぐり出そうとするのであったが《…略…》どうにもつなぎ合せようのないはめ絵のように、ぴったりしないのであった。
横山 美智子 / R夫人のサロン「静かなる奔流 (1947年)」に収録 amazon
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再会・再び出会うの表現・描写・類語(人間関係・地位のカテゴリ)の一覧 ランダム5
夜中の部屋で、久しぶりの人と会うのは気分が良かった。 まるで新年を迎えたみたいだった。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
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「人間関係・地位」カテゴリからランダム5
木村の親友でいらっしゃるのですから、近い他人ですわね。
有島武郎 / 或る女
いつもその前に人だかりがして群衆の囁 きの瘤 を作っている
岡本かの子 / 母子叙情
そしてぼくは今こうして、ひとつの閉じられたサーキットの中にいる。ぼくは同じところをぐるぐるとまわり続けている。どこにもたどり着けないことを知りながら、それをやめることができない。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
「人の印象」カテゴリからランダム5
この無残にも形を失った顔は、まるで死がこの上を兇暴な力をふるいながら嵐のように通り去り、荒井幸夫のなかに動いていた生命を 生 胆 を抜くかのようにひっさらって行ってしまったという風に見える。
野間宏 / 崩解感覚「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
ひきとめたくて 思わず肘を引っぱれば するするとほどけてしまいそうで
綿矢 りさ / 亜美ちゃんは美人「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
もう日向とは思えないそこに、気のせいほどの影がまだ残っている。
梶井基次郎 / 冬の日
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