上掛けのカバーに涎の染みをひろげて眠りこけている。

眠っているときにしばしば見せる夢のような笑顔

寝顔が少年のように安らか

死に顔みたいにきれいな寝顔

（寝顔は）昼間よりも弱く、無防備に見えて少し心細くなる。

鷲みたいなこわい鼻をした、強そうな顔

透き通るように白く整った顔

人間製造に厭（あ）き厭きした造物主が居眠りしながら附けたような目鼻

どら焼のような丸顔

人のいい笑顔を皺（しわ）の中に隠して

（夢は）浮かぶ端から、手がかりのないつるりとした意識の斜面を虚無の領域に向けて滑り落ちていった

彼は心を静め、目を閉じて眠りについた。意識の最後尾の明かりが、遠ざかっていく最終の特急列車のように、徐々にスピードを増しながら小さくなり、夜の奥に吸い込まれて消えた。

はとのくちばしはとがっていて　いたくはないけれど　すばやくつっつく（ここまで夢の描写）　手でかばっても指のすきまから　首とかほっぺた　セーターのあみめの間からも　母さんも止めようとしてくれるが、つっつきはいつまでたっても 　びくりとして起き、眠りのために上がっていた体温が急に冷える。布団の感触や外気の匂いが五感に、さっきまでのは噓だ、これがリアルだと教えてくれる。薄く目を開くと世界は元通りで布団のなかで寝返りをして安心した。どんな夢を見ていたんだっけ。完全に現実だと思っていた夢の世界が急速に遠のいていき、ついさっきまでそのなかにいたのに、どんなだったかもうよく思い出せない。

（鐘の音）朝六時にるらーん、るらーん、と睡りのおくの方で揺れる

夜の中に彼女を置き去りにして眠りの中に去ったりする。