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「淵には九つの性質がある。静水をじっと湛 えているのも淵だ。流れて来た水のしばらく淀 むところも淵だ。底から湧 いた水が豊かに溜 り、そしてまた流れ出るところも淵だ。滴 たって落つる水を受け止めているのも淵だ――」 父親は大体こんなふうに淵が水を受け入れる諸条件を九つの範疇 にまとめて、 「これを九淵の説と云って、水はいろいろの変化で向うが、それを受け容れる淵はたった一つなのだ。この淵の無心な気持ちになっていれば世間がどう変りこっちにどう仕向けようと、余悠綽々 なのだ。
岡本かの子 / 渾沌未分 ページ位置:36% 作品を確認(青空文庫)
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池・湖・沼・水たまり
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前後の文章を含んだ引用
......何でもあんまり負け惜 しみ過ぎる」と悲しく疎 まれた。 今夜はまたとても高踏的 な漢籍 の列子の中にあるという淵 の話を持ち出して父は娘に対する感情をカモフラージュした。 「淵には九つの性質がある。静水をじっと湛 えているのも淵だ。流れて来た水のしばらく淀 むところも淵だ。底から湧 いた水が豊かに溜 り、そしてまた流れ出るところも淵だ。滴 たって落つる水を受け止めているのも淵だ――」 父親は大体こんなふうに淵が水を受け入れる諸条件を九つの範疇 にまとめて、 「これを九淵の説と云って、水はいろいろの変化で向うが、それを受け容れる淵はたった一つなのだ。この淵の無心な気持ちになっていれば世間がどう変りこっちにどう仕向けようと、余悠綽々 なのだ。ここのところをわが青海流では、 死屍 水かかずしてよく浮く といって、平泳ぎのこころだ」 「それは、よくおとうさんがおっしゃる、あの渾沌未分の兄弟か何かなの」 小初は食......
単語の意味
湛える(たたえる)
無心(むしん)
暫く・姑く・須臾(しばらく)
湛える・・・水などの液体をいっぱいに満たす。気持ちを顔に表す。
無心・・・1.無邪気なさま。雑念や欲望にまったくとらわれてないさま。
2.正当な理由も無く、人に金品をねだること。
2.正当な理由も無く、人に金品をねだること。
暫く・姑く・須臾・・・1.長いと感じるほどではないが、すぐともいえないほどの時間。ちょっとの間。一時的。
2.ちょっと待った!
2.ちょっと待った!
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