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私に対する無視は、とても静かなものだった。口をきいてもらえないだけで、それ以上の嫌がらせをされることはなかった。 朝は、なるべくぎりぎりに登校して、朝の会の直前に教室に入って席に座る。 休み時間になると席を立ち、校舎の中を歩いて時間を潰す。授業の合間の十分休みは、新校舎を一周。四十分ある昼休みは、新校舎と旧校舎を二周ずつ回って、トイレに三カ所立ち寄ると終わる。私は規則正しくそうして歩き回りながら、休み時間を過ごした。 弁当の時間は、誰もいない、屋上へ続く封鎖されたガラス戸の前の階段の踊り場で、すばやく終えた。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 ページ位置:85% 作品を確認(amazon)
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無視される(いじめ)
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......た。 小川さんの素早い指示で私と口をきく人はいなくなり、私は一人で過ごすようになった。若葉ちゃんは私の代わりに許されて、小川さんたちのグループに戻って行った。 私に対する無視は、とても静かなものだった。口をきいてもらえないだけで、それ以上の嫌がらせをされることはなかった。 朝は、なるべくぎりぎりに登校して、朝の会の直前に教室に入って席に座る。 休み時間になると席を立ち、校舎の中を歩いて時間を潰す。授業の合間の十分休みは、新校舎を一周。四十分ある昼休みは、新校舎と旧校舎を二周ずつ回って、トイレに三カ所立ち寄ると終わる。私は規則正しくそうして歩き回りながら、休み時間を過ごした。 弁当の時間は、誰もいない、屋上へ続く封鎖されたガラス戸の前の階段の踊り場で、すばやく終えた。 不安だった掃除の時間は、掃除場所に行くと小川さんも佐久間さんもサボっていておらず、ほっとしながら一人で掃除した。 教室から逃げられない自習時間は、寝た振りをし......
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無視される(いじめ)の表現・描写・類語(人間関係・地位のカテゴリ)の一覧 ランダム5
私に対する無視は、とても静かなものだった。口をきいてもらえないだけで、それ以上の嫌がらせをされることはなかった。 朝は、なるべくぎりぎりに登校して、朝の会の直前に教室に入って席に座る。 休み時間になると席を立ち、校舎の中を歩いて時間を潰す。授業の合間の十分休みは、新校舎を一周。四十分ある昼休みは、新校舎と旧校舎を二周ずつ回って、トイレに三カ所立ち寄ると終わる。私は規則正しくそうして歩き回りながら、休み時間を過ごした。 弁当の時間は、誰もいない、屋上へ続く封鎖されたガラス戸の前の階段の踊り場で、すばやく終えた。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
いつも休み時間は小川さんと大声で笑っていた若葉ちゃんが、今では、机の上で、シャープペンシルを必死に弄くりまわして、教室の声が届かない場所へ行こうとしているみたいだった。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
拒絶は怖いもので、自分自身の存在価値が突き飛ばされたような気持ちになる。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
小川さんたちの無視が静かなものだったせいか、私は思ったほどには傷つけられずに済んだ。 時折吐き捨てられる「死ね」「きもい」という言葉だけが、しんしんと、教室の中を降ってくる。その言葉は、静かに、私の内側に降り積もっていく。 その雪みたいな言葉たちと、無視という沈黙。私がされたのはそれだけで、何かとからかわれて標的にされている馬堀さんに比べれば、随分とラッキーだった。 枠から外れてみると、学校は随分と静かな世界だった。あんなに賑やかだった休み時間の騒ぎ声も、テレビの砂嵐のような意味のない雑音に変わった。 騒がしくてあわただしい教室の中で、私の時間だけが、やけにゆっくりと流れていた。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
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女房や子供から生木裂くみたいに引き離されて兵隊に駆り出されていった
宮本 輝 / 泥の河「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
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