車の通れない狭い登り坂。

人っ子一人通らない早寝の暗い横通り

線路沿いの国道から一本南寄りの細い道に入ると、人のざわめきが急に遠のいてゆく。

延徳街道と穂波のほうから戸狩へはいる白い道すじ

大通りから１本入ると、めまいのように夜が暗かった。

舗装された道路は数十メートルごとになだらかに曲がっていて、細い川のようでもあった。

普通の通行人のための路ではないような隘路（あいろ）

（東海道）「この東海道というものは山や川や海がうまく配置され、それに宿々がいい工合（ぐあい）な距離に在って、景色からいっても旅の面白味からいっても滅多に無い道筋だと思うのですが、しかしそれより自分は五十三次が出来た慶長頃から、つまり二百七十年ばかりの間に幾百万人の通った人間が、旅というもので甞（な）める寂しみや幾らかの気散じや、そういったものが街道の土にも松並木にも宿々の家にも浸み込んでいるものがある。その味が自分たちのような、情味に脆（もろ）い性質の人間を痺（しび）らせるのだろうと思いますよ」

高速道路が壊滅的な渋滞状態に陥って、足止めを食らっている。

狭く咽喉のようになった往来