猫（ねこ）に見込まれたカナリヤのように身もだえし

目をおおいたい苦しみ

心が 壊死 を起こしそうだ

（同居していた友人が金を持って勝手に出て行って）あのひとはもうここに住まないし、多分もうよりは戻らないだろう。 　修復はないだろう。 　彼女を思い出して笑顔になるのには時間がかかるだろう。 　そのことがリアルな真実として、まだ納得がいかない心の中にただショックな音をたてて響いてきていた。

老いぼれたような私の心に反比例して、この肉体の若さよ。

立て付けの悪い家が風で鳴るように、体のあちこちがミシミシと音を立てる

嬉しいのだろう。ほほの辺りが微笑むようにむず痒くなってくる。

喉のところが、箸のようなものでぴくぴくと突き刺されてるように痛い

鋭くて思わず 身体 が斜めになってしまうような頭痛

「風邪はね。」うららは少しまつげをふせて淡々と言った。「今がいちばんつらいんだよ。死ぬよりつらいかもね。でも、これ以上のつらさは多分ないんだよ。その人の限界は変わらないからよ。またくりかえし風邪ひいて、今と同じことがおそってくることはあるかもしんないけど、本人さえしっかりしてれば生涯ね、ない。そういう、しくみだから。そう思うと、こういうのがまたあるのかっていやんなっちゃうっていう見方もあるけど、こんなもんかっていうのもあってつらくなくなんない？」