人生に成功した大人が行く店

目が飛び出るほど高い

値段にびびる

尻込みするような金額

値段書きなど出ていない高級ものばかり

人生に成功した大人が行く店

（高級レストランのウェイター）「白いブラウスに黒のロングスカート。髪の毛はアップにまとめろ、って言われて。まるで、どっかの合唱団員みたいな恰好だけどね」

（高級レストラン）店内に、会話を邪魔しない程度に低く小さく流されているのはオペラ。コロラテューラ・ソプラノの女の声と、テノールの男の声とが混ざり合い、そこに、客たちのぼそぼそとした話し声や皿の音、グラスを重ね合わせる音などが水のように溶けこむ。

（高級レストラン）テーブル席を占めていた客の大半が、仕立てのいいスーツやブランドもののドレスをまとった、スノッブな感じのする大人たちばかりだった。

法外な値段

不如意な暮しむき

いくら営業部で稼いでも、開発のために底が抜けたように使われてしまう。

スケベ心出した価格設定

目をむくような値段

（小さなバーの）店内には客の姿は殆んどなく、しんとした空気が長い時を経た木材や漆喰によくなじんでいた。何十年か前に流行ったようなジャズ・ピアノ・トリオの音楽が天井のスピーカーから小さく流れ、グラスの触れあう音や氷を割る音がときおりそれに混じった。

正月が二度来たような賑わい

（イスラム教の礼拝堂）がらんとして何もない石畳と絨氈（じゅうたん）の奥まった薄闇（うすやみ）へ、高い窓から射（さ）し入る陽の光がステンドグラスの加減で、虹ともつかず、花明りともつかない表象の世界を幻出させている。それを眺めていると、心が虚（うつろ）になって、肉体が幻の彩りのままに染め上げられて仕舞いそうな危険をほとほと感ずる。

真上にエアコンがあり冷風が直撃するポジション

（夜の病院）まだ八時前だというのに外来受付の明かりが消されてしまった待合ホールは、薄暗い蛍光灯の中、古びたベンチが並んでいる。 　昼間、ここで百人を超す人々が順番待ちをしていたとは思えないほど狭い。 　人々の姿が消え、夜間の待合ホールに残されているのは、古びたベンチと、カラフルなペンキで床に示された各病棟への矢印だけだ。 　ピンク色の矢印は産婦人科へ。黄色い矢印は小児科へ。そら色の矢印は脳外科へ。 　薄暗い蛍光灯の下、カラフルな矢印だけが華やいで見える。カラフルな矢印だけが場違いに見える。