（老いた象）今にも心臓発作を起して死んでしまいそうなよぼよぼの象

老人は、子供のころよく見た腹話術の人形みたいな顔をしていた。話すときの、口元の動きに特徴があった。

鶴 のような痩せさらばえた老人

二言目には「死にたい」と漏らす祖父

しなびたマリー・アントワネットのような着飾った老婦人

繁ばあちゃんも言った。小声のつもりなんだろうけど、耳が遠いから音量が絞りきれてない。

（お婆さんの）しなびた手

年とともに舌が荒れたのか、にぶくなったのか、味が濃くないと駄目だった。

老人は、子供のころよく見た腹話術の人形みたいな顔をしていた。話すときの、口元の動きに特徴があった。

博士は六十四歳の、数論専門の元大学教師だった。見た目は実際の年齢よりもやつれていた。単に老けているだけではなく、身体の隅々にまできちんと養分が行き渡っていない印象を与えた。ひどい猫背のために一六〇センチほどしかない身長はますます小さく見え、骨張った首筋には皺の間に垢がたまり、ぱさついて好き勝手な方向に跳ねる白髪が、せっかくの福耳を半分覆い隠していた。声は弱々しく、仕草はスローモーで、何をするにもこちらの予想の二倍の時間が掛かった。