沖には三角の島影が見える

蜂の巣を伏せたような、こんもりとした小さな島

海と云っても、前に大きな島があって、河のように思われた。

難破船のような黒い島が波にもまれる

中の海の大根島にも陽が当り、それが赤鱏（あかえい）を伏せたように平たく

崩壊したようなさびしい表情に満たされて涯（はて）もなく君の周囲に広がっていた。

火の見へあがると、この界隈（かいわい）を覆っているのは暗い甍（いらか）であった。《…略…》レストランの高い建物が、思わぬところから頭を出していた。

眼前に、黒々と聳え立つ岩の要塞があった。 　いや、実際にはまだ遥か遠方にある。なのに圧倒的な岩の質感がそう見せる。視界のすべてを奪ってこちらに迫ってくる。上越国境の稜線が真一文字に宙を切り裂き、その上の空は圧縮されでもしたかのように狭い。壮観というのとは違う。威圧的だ。一ノ倉沢は人間を拒絶している。そうせんがために、確固たる意思を抱いた自然が巨大な城壁を築き上げた。そんな思いにとらわれる。

夕日を受けると少し冷たい鉱石のように鈍く光る山

平和だなと思った。こんな景色を見ているだけで、ますます日常が遠のいていく気がする。