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五ツ六ツ、撲るように刀でたたくと、仁吉の体は、魚の臓物のように、船底にして、声も音も消してしまった。
吉川英治 / 治郎吉格子 ページ位置:92% 作品を確認(青空文庫)
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刃物で人を切る(刺す)
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......た。 「けッ、女々めめしい声を出しやがる。病人を斬って逃げ出すような、ケチな盗ッ人ほど不愍ふびんなものはねえ。せめて、俺ぐらいにあやかるように、もう一度、生れ直して来い」  五ツ六ツ、撲るように刀でたたくと、仁吉の体は、魚の臓物のように、船底にして、声も音も消してしまった。  白い月と、川波と、そして、お喜乃の銀釵ぎんさいが、かすかに、ふるえているばかりである。  ざぶりっ、とふなべりから手を洗って、 「あ、もう来やがった」  と、治郎吉は、帯を締め直......
単語の意味
臓物(ぞうもつ)
体(からだ)
刀(かたな)
臓物・・・内臓。とくに食用の動物、鳥、魚などのはらわた。ホルモン。
・・・頭・胴・手足など、肉体全体をまとめていう言葉。頭からつま先までの肉体の全部。身体。体躯。五体。健康。体力。
・・・刀剣のうち片刃(かたは[=片方だけに刃がある])のもの。諸刃・両刃(もろは)のものは「剣(けん・つるぎ)」という。「かたな」の音は「かたは」が転じたものとされる。
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していることの実感をつかみたいというだけの理由で、たて続けに何度も刺している無表情な十和子
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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