加速しながらカーブを曲がる。遠心力で、身体は窓に押しつけられる。

対向車の途切れたタイミングで、重藤はクラウンのハンドルを切り、建物左手奥の駐車場へ乗り入れた。

地面に膝が触れそうなほど、車体が傾く。

車体はむんずと乗客を揺り上げながら、急角度に曲った。そのひまに窓外の闇（やみ）はマロニエの裸木を、銅像もろとも、掬（すく）い去った。

車は後輪を激しくスライドさせてカーブを曲がる

夏休みのせいか、道がひどく混んでおり、ノロノロ運転が続いていた。

（ロケットエンジンの燃焼テスト。ロケットエンジンの）銀色のスカートが、轟然と噴き出した白煙と炎にまみれたのはそのときだ。 　モニタが映し出しているその光景は、無音だ。その中でエンジンだけが生命を吹き込まれ、猛然と炎を噴出し、巨大なエネルギーを消費している。無声映画を観ているような不思議な光景の中で、燃焼時間の自動カウントだけが続いていた。

船の横面（よこつら）に大きな波が浴びせこんで来たので、片方だけに人の重りの加わった船はくるりと裏返った。舷までひたひたと水に埋もれながらもとにかく船は真向きになって水の面に浮かび出た。

巨人が息を吐くような音で、ドアが開く。

ポンポン船が 咳込むように進んでいく