中心にある教壇に向かってすり鉢状になだらかに下がっている講義室

（大学）二百名は収容できる大きな階段教室は、ほどよい間隔を置いて満遍なく聴講生で埋まっている。

教室の中は、蜂の巣をつついたような騒音に満たされていた。

七限の授業には、それまでと違ってスーツ姿の男性や博識そうなおばさんや、なぜかセーラー服の女子高生がいたりして、すこし世界から外れたにおいがする。

大学って、そういうところだ。無責任を背負って、自由を装っている。未来どころか、三歩ほど先のことだって、本当は誰にも見えていないんだ。

夜になるとこの道を通る車は殆ど一台もなく、山肌から横に伸びた樹が目隠しとなって、お金のないカップルにとっては（車内が）格好の密室となる

（古いお好み焼屋の店内は食べ終わった後の）戦争の後のような鉄板を、窓からの午後の陽が照らしていた。

（ギターコンサート）《黒いデカメロン》の一曲目〈戦士のハープ〉が、緊迫した、ほとんど魔術的なほどに広大な二オクターヴの跳躍で始まると、会場はもう、つい今し方までとは別の空間になっていた。反復的な旋律が次第に空気を濃くしてゆく中で、ギターの長音が、会場の最も遠いところにまで何にも遮られることなく、真っ直ぐに伸びてゆく。この曲をよく知っている者、知らない者が、それぞれに、その 縹渺 たる響きに驚いた。 　それがまるで一つの予告であったかのように、蒔野はその後、一曲ごとに、とても同じ一本のギターで弾いているとは思えないほどの多彩な表現で、次々と、新鮮な音楽的風景を現出させていった。 　かつての一分の隙もない、あまりに完璧に律せられた世界とも違って、今はむしろ、音楽そのものに少し自由に踊らせて、それを見守りつつ、勘所で一気に高みへと導くような手並みの鮮やかさがあった。それもまた、長い〝スランプ〟の果てに、彼に生じた一つの変化だった。 　聴衆の感嘆は、楽曲が終わる度に拍手に熱を加えていった。

心理学的にも、適度な暗さは、人を適度に緊張や興奮させる。そんな状態で、人の顔が見えると安心感が大きくなるし、暗さによって大きくなった瞳を見ると相手に好意を抱きやすくなる。バーがデートをしたり、プロポーズをする場所として重宝されてきたのも、それが１つの大きな理由だろう。

新幹線の巨大な駅。田舎の小さな単線駅。実用一筋の貨物集積駅。