頭の中の出来事

そういうやり取りが遠のいてゆき、いつしかうとうと寝ていた。 　波音と、店から聴こえてくる音楽との間に短く、強烈に夢が忍び込んできた。

思い出そうとするそばから霧散していく夢の、仄かな感触だけが残っている。

私は疲れて、中途半端 な気持ちで眠ってしまった。 　浅い眠りだった。 　どこかがはっきりと覚醒していて、部屋の薄暗がりの明度まではっきりとわかっていた。呼吸は深く、まぶたは閉じていた。 　でも、完全には眠れなかった。 　静かに、静かに、夢が降りてきた。 　 闇 に舞い降りる、初雪のはじめのひとひらみたいに。

夢の中というのは感情の起伏が激しいものでしょう？　些細なことがやけに悲しかったり嬉しかったり。

眠れなくなっちゃって。 　夜明けの海辺を散歩したの。

園児のようにたわいもなく眠る

そのまま失神するように眠り込む。

まだ眠くて堪らない小犬のように眼をつむったまま加奈子の笑い声をうるさがった。

外の世界と自分の世界を厳密に隔てるように、掛け布団を首まで引っ張り上げた。