かすかに凌霄花 のにおいがした。門の左右を埋 める藪 のところどころから、簇々 とつるをのばしたその花が、今では古びた門の柱にまといついて、ずり落ちそうになった瓦 の上や、蜘蛛 の巣をかけた楹 の間へ、はい上がったのがあるからであろう。
芥川龍之介 / 偸盗 ページ位置:70% 作品を確認(青空文庫)
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蔓(つる)
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前後の文章を含んだ引用
......おのずから頂きをおぼろげな月明かりにぼかしながら、どの峰も、じっと物を思ってでもいるように、うすい靄 の上から、静かに荒廃した町を見おろしている――と、その中で、かすかに凌霄花 のにおいがした。門の左右を埋 める藪 のところどころから、簇々 とつるをのばしたその花が、今では古びた門の柱にまといついて、ずり落ちそうになった瓦 の上や、蜘蛛 の巣をかけた楹 の間へ、はい上がったのがあるからであろう。…… 窓によりかかった阿濃 は、鼻の穴を大きくして、思い入れ凌霄花のにおいを吸いながら、なつかしい次郎の事を、そうして、早く日の目を見ようとして、動いている胎児の......
単語の意味
蜘蛛(くも)
蜘蛛・・・クモ目の節足動物の総称。8本足で体は袋状。尻から糸を出す。ほとんどの種は糸を使って巣を張り、そこに虫を捕らえて食べる。
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腐った髪の毛のような蔓
岡本かの子 / 母子叙情
塀の金鎖草の蔓の一むらの茂みが初夏の夕暮の空に蓬髪のように乱れ、
岡本かの子 / 巴里祭
(野生の藤蔓が)大樹の松の幹をあたかも虜(とりこ)を捕えた綱のように、ぐるぐる巻きに巻きながら攀じ登って
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
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その人肌のように艶のある幹の色を老人は愛していた。
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
(椰子の実)香 わしい 汁 と甘い肉を持つ果実
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 amazon
(木の根が養分を吸う)毛根の吸いあげる水晶のような液が、静かな行列を作って、維管束のなかを夢のようにあがってゆく
梶井基次郎 / 桜の樹の下には
ザザッと俄(にわ)か雨でも落ちるように、朽ちた木の実が屋根を打つ
阿刀田 高 / ナポレオン狂 amazon
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