テーブルに置いた鼠の腕の時計が不自然なほどの巨大な音を立て始める。十二時三十五分、おそろしく長い時間が流れてしまったようでもある。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置:77% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
黙る・沈黙
静けさ・静寂
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......だ。「音楽は?」とジェイが訊ねる。「いや、今日は静かにやろう」と鼠は言った。「何かの葬式みたいだ」 鼠は笑った。そして二人は何も言わずにコーラとビールを飲んだ。テーブルに置いた鼠の腕の時計が不自然なほどの巨大な音を立て始める。十二時三十五分、おそろしく長い時間が流れてしまったようでもある。ジェイは殆んど動かなかった。鼠はジェイの煙草がガラスの灰皿の中で吸口まで灰になって燃え尽きるのをじっと眺めていた。「何故そんなに疲れたんだい?」と鼠は訊ねてみた......
単語の意味
鼠(ねずみ)
鼠・・・1.ネズミ科の哺乳動物の総称。人家の付近などに住む、敏捷な小動物。繁殖力が高く、食害や伝染病の原因となるため嫌われている。
2.鼠色(ねずみいろ)の略。
3.比喩として、こそこそと悪事を働く者、ひそかに害をなす者のたとえ。
2.鼠色(ねずみいろ)の略。
3.比喩として、こそこそと悪事を働く者、ひそかに害をなす者のたとえ。
ここに意味を表示
黙る・沈黙の表現・描写・類語(声・口調のカテゴリ)の一覧 ランダム5
房子は黙っていたが、その姿は、いろんな風に泡立って来る感情を小さなコルクの栓で蓋をしている罎(びん)みたいだった。
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
底なし井戸に小石を投げ込んだような沈黙がしばらく続いた。石が底につくまで三十秒かかった。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
(蝉が鳴りしきるお寺で)わたしたちはまるでせみの声に鼓膜を吸い取られたかのように、無口にお寺の精進料理を食べた。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
静けさ・静寂の表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
(ひっそりとした町)首をしめられたような町の中
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
時計が九時を打った。九つめの鐘がゆっくりと暗闇の中に吸いこまれてしまうと、沈黙がその間隙にもぐりこんだ。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
柚子の樹に包まれた家々は、ひっそりと静まりかえり、どこからも物音ひとつ聞えない。音という音はすべて、無数の柚子の実が吸いとってしまうのだろうか。
瀬戸内 寂聴 / 私の京都 小説の旅 amazon
時の流れのように秘 やかに流れて行く
夢野久作 / ドグラ・マグラ
このカテゴリを全部見る
「音の響き」カテゴリからランダム5
妹はフリオ・イグレシアスのレコードをかけた。 フリオ・イグレシアス! と僕は思った。やれやれ、どうしてそんなモグラの糞みたいなものがうちにあるんだ?
村上春樹 / ファミリー・アフェア「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
目の前が光った。間を置かずに、巨木が真っ二つに引き裂かれるような音がして、何か悲劇的なまでに痛烈な落雷の地響きが伝わってきた。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
小学生の修学旅行で、車内は燕の群がさえずるよう
松本 清張「点と線 (新潮文庫)」に収録 amazon
「声・口調」カテゴリからランダム5
有島武郎 / 或る女
声は押し殺されて、聞き取れないほど低い。
綿矢 りさ / かわいそうだね?「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
音の響き の表現の一覧
声・口調 の表現の一覧
感覚表現 大カテゴリ
人物表現 大カテゴリ