ハリボテみたいなもの

いや。あれは神じゃない。 蜘蛛 の巣にかかった 蝶 とそっくりだ。始めはその蝶はたしかに蝶にちがいなかった。だが翌日、それは外見だけは蝶の羽根と胴とをもちながら、実体を失った 死骸 になっていく。我々の神もこの日本では蜘蛛の巣にひっかかった蝶とそっくりに、外形と形式だけ神らしくみせながら、既に実体のない死骸になってしまった《…略…》お前たちが信じているあの神はこの国ではまるで蜘蛛の巣にぶらさがった蝶の死骸のように外形だけ保って血も実体も失っていたのだ

上野谷中切っての美少年だった。だが、鑿（う）ち出しものの壺（つぼ）のように外側ばかり鮮かで、中はうつろに感じられる少年だった。《…略…》女たちは少年の心のうつろを見過ごしてただ形の美しさだけを寵（ちょう）した。

（バカな文章で）実質もなければ、品位もない、まるで救世軍の大鼓のようなものだ。

銀流しみたいな男

四十代前半くらい。俳優にでもなれそうな二枚目風だが、笑顔にかすかに崩れた感じが漂っている。

憎らしいほどの、美少年

彼は診療所ではキャップを深くかぶり、大きなマスクをつけていた。患者に見えるのは、彼の一対の目と、一対の耳だけだった。にもかかわらず、彼が好男子であることは隠しようがなかった。美しい鼻はりりしく、またセクシュアルにマスクを盛りあげていた

男が見ましても吸付いてみたいほどのういういしい美少年

マセラティから下りてくる五反田君の姿を想像した。チャーミングだ。ラジアル・タイヤの宣伝みたいだ。

純粋培養の花のような危うさがある少女

目も覚めるような美人

園子は、自分のはなびらの大きさにたえかねているような大輪の牡丹をおもわせる。

男とは、肉欲を隠し服を着た狼のようなもの

赤い頬にあどけなさが残る女

絹糸のようにデリケート

海の底を探るように漠然とした頼りない気持ち

高く低く積まれた木の島の間を泳ぐ

部屋はチリひとつなく片付いている

杉や楠の巨木の前に立ったときの、おのずと合掌してしまう神々しさ