人間の脳髄と称する怪物は、身体の中でも一番高い処に鎮座して、人間全身の各器官を奴僕 の如く追い使いつつ、最上等の血液と、最高等の営養分をフンダンに搾取している。脳髄の命ずるところ行われざるなく、脳髄の欲するところ求められざるなし。何の事はない、脳髄のために人間が存在しているのか、人間のために脳髄が設けられているのか、イクラ考えても見当が付かないという……それ程左様に徹底した専制ぶりを発揮している人体各器官の御本尊、人類文化の独裁君主がこの脳髄様々に外ならないのだ。
夢野久作 / ドグラ・マグラ ページ位置:26% 作品を確認(青空文庫)
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脳
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前後の文章を含んだ引用
......器官の中でもタッタ一つ正体のわからない、巨大な蛋白質製のスフィンクスなんだ。地上二十億の頭蓋骨を朝から晩までガンガンいわせ続けている怪物そのものに外 ならないのだ。 人間の脳髄と称する怪物は、身体の中でも一番高い処に鎮座して、人間全身の各器官を奴僕 の如く追い使いつつ、最上等の血液と、最高等の営養分をフンダンに搾取している。脳髄の命ずるところ行われざるなく、脳髄の欲するところ求められざるなし。何の事はない、脳髄のために人間が存在しているのか、人間のために脳髄が設けられているのか、イクラ考えても見当が付かないという……それ程左様に徹底した専制ぶりを発揮している人体各器官の御本尊、人類文化の独裁君主がこの脳髄様々に外ならないのだ。 ところが、それはそれとしてここに一つ不思議な事があるのだ。 それは他事 でもない、その脳髄と自称する蛋白質の固形物 自身が、古往今来、人体の中でドンナ役割をつ......
単語の意味
称する(しょうする)
身体(しんたい)
君主(くんしゅ)
称する・・・自分のこととして告げる。そうであると言う。名乗る。名づける。
身体・・・人のからだ。肉体。
君主・・・世襲(=家族や血の繋がりのある者が受け継ぐこと)により、その国を代表する地位にある者。世襲による、その国を治める一番偉い人。天皇や王、皇帝、帝王など。
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(脳の)模型は、二ヶ所両耳の後ろの所で縦に切断されていた。左耳の断面には脳味噌が詰まっており、右耳の断面には赤色と青色の血管が広がっていた。脳味噌は肥ったなめくじのように、半透明でぶよぶよしていた。蛍光灯の光が皺の一本一本の溝に当たって、脳味噌をよりリアルに浮き上がらせていた。それに比べて血管の色合いはどぎつく、現実味がなかった。二色の合成着色料で色付けした細めのスパゲッティーが、もつれ合っている感じだった。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
脳髄は一種の電話交換局に過ぎない
夢野久作 / ドグラ・マグラ
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(風呂の排水溝に溜まった抜け毛)少しずつ削りとられていく夫の若さのようでもあり、体内から不意にほとばしり出た、生々しい男の原材のような気もした。
林 真理子 / てるてる坊主「最終便に間に合えば (文春文庫)」に収録 amazon
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血がまるでホースのさきから噴き出しでもするように流れ出る。
宇野 千代 / 色ざんげ amazon
緑色の 襦袢 の背中に、あざのような赤い 斑点 が現われ、次第に拡がって行った。
大岡 昇平「野火(新潮文庫)」に収録 amazon
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