(プラスチック製の丼だったので思ったより軽い)こういう店では、よもやプラスチックの丼を使っているとは誰も思わない。 カツ丼が到着する。 当人も、体の関係諸器官も、丼=瀬戸物、と信じきっている。 丼+ゴハン+トンカツ=総重量、という計算が速やかに、当人および関係諸器官の間で行われ、「大体このぐらい」という結論が出て、当人もすっかりその気になって丼をひょいと持ちあげる。 すると、それが予想と全く違って急速に持ちあがってしまう。 あの瞬間の空しさ、寂しさはいうにいわれぬものがある。 裏切られた、という思い、おとしめられた、という思い、情けないという思いなどでしばし呆然となる。 胸にポッカリ空洞があいたような空しい気持ちになり、これも時代だ、などの諦観も湧き、空しい気持ちになる。
東海林 さだお「タコの丸かじり」に収録 ページ位置:35% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
重み(重い・軽い)
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......る。 一応ちゃんとした店に入り、例えばカツ丼などを注文してその到着を待つ。 店内を見渡せば、その造りも調度品もちゃんとしている。カツ丼の値段も千二百円である。 こういう店では、よもやプラスチックの丼を使っているとは誰も思わない。 カツ丼が到着する。 当人も、体の関係諸器官も、丼=瀬戸物、と信じきっている。 丼+ゴハン+トンカツ=総重量、という計算が速やかに、当人および関係諸器官の間で行われ、「大体このぐらい」という結論が出て、当人もすっかりその気になって丼をひょいと持ちあげる。 すると、それが予想と全く違って急速に持ちあがってしまう。 あの瞬間の空しさ、寂しさはいうにいわれぬものがある。 裏切られた、という思い、おとしめられた、という思い、情けないという思いなどでしばし呆然となる。 胸にポッカリ空洞があいたような空しい気持ちになり、これも時代だ、などの諦観も湧き、空しい気持ちになる。 心理的ダメージばかりではない。 紙コップの例をまつまでもなく、すっかり瀬戸物と信じているから、瀬戸物用の力と速度で持ちあげることになり、丼は急速に持ちあがる。......
単語の意味
胸(むね)
ここに意味を表示
重い・軽いの表現・描写・類語(感触のカテゴリ)の一覧 ランダム5
もう二度とこんな重いものを持って行くのはコリゴリ
東海林 さだお「タコの丸かじり (文春文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「感触」カテゴリからランダム5
すっと触った指がありもしないささくれを想像して鳥肌を立てるほどになめらか
綿矢 りさ / 仲良くしようか「勝手にふるえてろ (文春文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
感触 の表現の一覧
感覚表現 大カテゴリ