電車に轢かれて死んだ。《…略…》死体は何千という肉片となってあたりの野原に飛び散り

弾丸は額を貫き、流れた血の筋がこめかみまで続いていた。苦悶の色はない。薄く開いた唇から汚れた歯がわずかに見えた。

刑場の露と消える

至高の陶酔のうちに最後を迎える

赤ん坊の死体が、うき袋のようにぽかぽかうかんでながれている

命を絶ってしまえば、一瞬にして絶望から解き放たれる。

天寿をまっとうする

自分はもうこれで死ぬなと悟り、そして、悟った瞬間、それまでの人生の様々なシーンがばたばたと音をたて、目の当りに、細部まで明瞭に、頭の中に閃いていった

部屋の隅の天井板を破り、 梁 と梁のつくる直角のところに、太い薪用の割木を渡しその真中のところに麻の紐が巧みな結び目をつくってくくりつけてある。《…略…》紐はさらに死体の後頭部のところにもう一つ結び目をもっていて、そこで二本に分れて、細い白い頸の輪に食い入っている。 　後頭部のぼんのくぼのところに食い入るように当っているその太い結び目。そして頸筋に捲き付いた麻紐は毛ののびはじめた頭髪をさかさになで上げるようにして、まるで頭部と頸部の境界線ででもあるかのようにその皮膚を変色させている。

この世界から密やかに退場してゆく