鳥の臓物の心臓のような口紅

口紅を塗った。赤という平凡な色だけでは、この唇のさびしさは塗りかくせない

ルージュで唇をザクロの花のように染める

唇は痩せており、明るいルージュで描かなければ形ができない

（オレンジの口紅）口紅の色と皮膚との対照で、顔全体がにわかに安っぽい感じに変えられていく。

唇を歪めてチェッとつばを吐く

唇が捲れ気味に片方へ寄るとそこに微笑が浮かぶ

（暗い部屋の窓際で）月光の角度のせいで、彼女の唇の影が誇張されていた。そのいかにも傷つきやすそうな影は、彼女の心臓の鼓動かあるいは心の動きにあわせて、ぴくぴくと細かく揺れていた。それはあたかも夜の闇に向かって音のない言葉を囁きかけるかのように。

唇ばかりが熱で乾いて赤く冴えている

血の気のない薄い唇を妙にゆがめてピリピリしているような眼差し

おしろいは御所人形の肌のように底光りしている

鏡と格闘してきたような厚化粧

昼間の染香の顔は皮膚が乾いていて、唇の皺のあいだに紅のなごりが縦縞になってはさまっている

（整形した鼻）鼻だけが不自然に顔にくっついていて、顔の皮も不思議につっぱっている

ほとんどすっぴんの彼女の笑顔は、眉毛がうすいせいか、どこか退廃的だ。