様々な音が混じりあったやわらかなうなりが、雲のように街の上に浮ぶ

豆腐屋のプー・・・アー・・・というやるせない笛の音色

盛り場らしい騒音が、漬物樽（つけものだる）の中のように、あたりの空間を過飽和にちかい濃度で埋めつくしている

ブーンという都会特有の鈍い唸り（地下鉄の列車、ハンバーガーを焼く音、高架道路の車の音、自動ドアが開いたり閉まったりする音、そんな無数の音の組み合わせだ）が辺りを被っていた。

音と意識しないほど耳になじんだ街の騒音

黒く萌えた連山のパノラマ

夜の森のふくれあがる豊かな香

隕石落下により、神社を中心とした広範囲が瞬時に壊滅した。家屋や森林の破壊に留まらず、衝撃により地表ごと大きくえぐられ、直径ほぼ一kmにも及ぶクレーターが形成された。さらに五km離れた地点でも一秒後にはマグニチュードの揺れが伝わり、十五秒後には爆風が吹き抜け、町の広範囲が甚大な被害に見舞われた。最終的な犠牲者は五百人以上にのぼり、それは町の人口の１／３にあたる。

危うい場所で見るとかくも風景とは美しく見えるものか

部屋は三十二階で、外の眺めは、低く広がる街並だった。