おそろしく静かだった。風の音さえ広大な林の中に呑み込まれていた。黒いむっくりとした鳥が時折赤い舌を出してあたりの空気を鋭く裂いたが、鳥がどこかに消えてしまうと、沈黙がやわらかなゼリーのようにそのすきまを埋めた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 ページ位置:77% 作品を確認(amazon)
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静けさ・静寂
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......の道で、頭が痛くなりそうなほどまっすぐだった。カーブもなければ、急な坂もない。前を見ると、何もかもが一点に吸い込まれていた。黒い雲がその点の上空を流れていた。 おそろしく静かだった。風の音さえ広大な林の中に呑み込まれていた。黒いむっくりとした鳥が時折赤い舌を出してあたりの空気を鋭く裂いたが、鳥がどこかに消えてしまうと、沈黙がやわらかなゼリーのようにそのすきまを埋めた。道を埋めつくした落葉は二日前の雨を吸い込んだまましっとりと湿っていた。鳥のほかに沈黙を破るものは何もなかった。どこまでも白樺の林がつづき、どこまでもまっすぐな道......
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静けさ・静寂の表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
(静けさとは)あるべきものがあるべき場所に納まり、一切手を加えたり、削ったりする余地などなく、昔からずっと変わらずそうであったかのような、そしてこれからも永遠にそうであり続ける確信に満ちた状態。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 amazon
雪はまだやまない。音はすべて雪に吸い込まれて、静かさよりもうひとつ上の状態にあるようだった。無をとおりすぎて、耳鳴りのようなかすかな音が聞こえるのだ。
林 真理子 / 京都「最終便に間に合えば (文春文庫)」に収録 amazon
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大地の声が、愛子の耳の中にある空洞を優しく埋める。
朝井 リョウ「武道館 (文春文庫)」に収録 amazon
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