（遠くに見える歓楽街の光）心の中には、幸橋の上から 眺めた道頓堀の遠い 光芒こうぼう が映し出された。 眩まば ゆく華やかな眺めであったはずだったが、邦彦には、かつて見たこともない冷え冷えとした、ひどくちっぽけな景観として心に 甦って来るのである。 　色とりどりの光をまとった船が、暗い海原に出航して行き、それを視界から消え去るまでじっと見送っていた、そんな空虚な寂しさがまといついて、邦彦は幸橋から見えていた夜の道頓堀が、人気のない一 艘そう の満艦飾の船みたいだったように思えるのだった。

澄んだ星空の一端が歓楽街の明かりのせいで火事のように明るい

雨の道頓堀を見つめた。極彩色の巨大な電飾板は、それぞれが、ぼっとかすんだようになって、このミナミの街全体を覆い尽くしている。

周囲が真暗なため、店頭に点（つ）けられた幾つもの電燈が驟雨（しゅうう）のように浴びせかける絢爛（けんらん）は、周囲の何者にも奪われることなく、ほしいままにも美しい眺めが照らし出されている

遥か向こうの港を隔てて山腹に銅色の光が塊り、その下に米軍の石油タンクの赤い灯が点っている

夜になると、灯が簪（かんざし）のようにキラキラして綺麗であった。

噴水の水飛沫がまぶしく輝く

男というのは顔の幅があるものなのか、借りた眼鏡は、下を向くとずり落ちそうになった。

めっきり水の細った秋の公園の噴水が霧（きり）のように淡い水量を吐（は）き出している

風呂桶を長くしたような煙突