カーテンに陽光が透けてベランダの鉄柵の黒い影が映っている。

カーテンを勢いよく開けた。陽光が一気に窓ガラスを突き抜けて飛び込んでくる。寝具から舞い上がる埃と、筋になった光線が邪魔をして、一瞬だけ私に向けられた旦那の顔を確かめそびれてしまった。

手をもう少しだけ持ち上げてカーテンを開ける。所々引っ掛かりながら、弱々しくレールが鳴る。開けた幅だけカーテンの濃い色合いが抜けて、無色の光が差し込む。

二人が入るカーテンの中は、窓ガラスごしの冷たい空気が伝わってきて寒かった。

すっかり色がわからなくなってしまったレースのカーテン

洋子と早苗は、どちらからというわけでもなく、二つ並んだレジでそれぞれに注文して一緒に席に着いた。

窓からもれる灯が地面に太い光の縞を描く

雨粒が断続的に窓を叩いていた。時が少しずつ重みを増し、冷ややかな薄闇とまじりあいながら部屋を浸した。電灯の黄色い光が花粉のように空中を漂っていた。

（イスラム教の礼拝堂）がらんとして何もない石畳と絨氈（じゅうたん）の奥まった薄闇（うすやみ）へ、高い窓から射（さ）し入る陽の光がステンドグラスの加減で、虹ともつかず、花明りともつかない表象の世界を幻出させている。それを眺めていると、心が虚（うつろ）になって、肉体が幻の彩りのままに染め上げられて仕舞いそうな危険をほとほと感ずる。

クーラーの音がぶんぶんと部屋に響いている。