小柄な、手足の動かし方に猫 のような敏捷 さがある、中肉 の、二十五六の女である。顔は、恐ろしい野性と異常な美しさとが、一つになったとでもいうのであろう。狭い額とゆたかな頬 と、あざやかな歯とみだらなくちびると、鋭い目と鷹揚 な眉 と、――すべて、一つになり得そうもないものが、不思議にも一つになって、しかもそこに、爪 ばかりの無理もない。
芥川龍之介 / 偸盗 ページ位置:34% 作品を確認(青空文庫)
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魔性の女
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前後の文章を含んだ引用
......ただ一本、細い幹をくねらした、赤松の影が落ちている。 「あれは、藤判官 の所の侍なの。」 沙金は、石段の上に腰をおろすかおろさないのに、市女笠 をぬいで、こう言った。小柄な、手足の動かし方に猫 のような敏捷 さがある、中肉 の、二十五六の女である。顔は、恐ろしい野性と異常な美しさとが、一つになったとでもいうのであろう。狭い額とゆたかな頬 と、あざやかな歯とみだらなくちびると、鋭い目と鷹揚 な眉 と、――すべて、一つになり得そうもないものが、不思議にも一つになって、しかもそこに、爪 ばかりの無理もない。が、中でもみごとなのは、肩にかけた髪で、これは、日の光のかげんによると、黒い上につややかな青みが浮く。さながら、烏 の羽根と違いがない。次郎は、いつ見ても変わらな......
単語の意味
鷹揚(おうよう)
敏捷(びんしょう)
頬(ほお・ほほ)
猫(ねこ)
鷹揚・・・小さなことにこだわらずゆったりとしているさま。おっとりしていて争いとは無縁な感じ。大様(おおよう)。
敏捷・・・動作や頭の回転がすばやいこと。また、そのさま。
頬・・・顔の一部。顔の両脇で、口の真横にあるやわらかい部分。ほっぺ。ほっぺた。
猫・・・1.ネコ科の哺乳動物の総称。形は虎に似て、柔軟な体や出入り自由な爪、鋭い感覚のひげを足を持つ。暖かいところを好み、鼠(ねずみ)をよく捕るとされる。
2.(猫の皮を胴張りに用いるところから)三味線の異称。
3.猫車(ねこぐるま)の略。
4.猫火鉢(ねこひばち)の略。
5.ふいごの内側についていて、空気の出る孔をふさぐ革。
2.(猫の皮を胴張りに用いるところから)三味線の異称。
3.猫車(ねこぐるま)の略。
4.猫火鉢(ねこひばち)の略。
5.ふいごの内側についていて、空気の出る孔をふさぐ革。
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