シャワーの立てる音の向こうから、いらっしゃいませという女性の声が聞こえてきて、はっと周りを見回す。もちろん浴室には自分以外だれもいない。いらっしゃいませのさざ波が自宅にまで押し寄せてくるようになると、いまが佳境なんだなとぼんやり分かる。

（長い１日が終わる）永い絵巻のような夜の終わりを感じていた。

生活はひどく忙しく、立体的な洞窟のようにごたごたと混みいっており、とても予備の食料のことまでは気がまわらなかった。

転変に富んだその夜を回想していた。《…略…》ほんとうにそれらは回想という言葉にふさわしいくらい一晩の経験としては豊富すぎる内容であった。

身動きも出来ぬほどスケジュールがつまっている。

長い間のニンタイが、私を何も信じさせなくしてしまいました。

いつも急ぐように生きてきた。時間もそれに合わせるように早く通りすぎて、気がつくと心だけがおいてきぼりをくってしまった。

一か八かの賭け

贅沢 は人間を堕落させる最大の敵

（落ちぶれて行く生活）あゆみは致死的な渦巻きの中心に向かって緩慢な、しかし避けることのできない接近を続けていた。