恋着（れんちゃく）する

九つの歳の巴里祭に母に連れられてルュ・ラ・ボエシイを通るとね。ベレを冠った鬚（ひげ）の削（そ）りあとの青い男に無理に掴まって踊らされてね。その怖ろしさから恋を覚え始めたのよ。

（少女に見つめられて）その少女の留保のない率直な視線は、彼の身体からあらゆる力をもぎ取り、持っていってしまったようだった。なんという視線だろう。それは研ぎ澄まされた鋼の長い針のように、彼の胸を一直線に刺し貫いていた。背中まで突き抜けそうなくらい深々と。

女心はシャワーのこのお湯みたいなもの。あるときは冷たく、またある時は火傷をするくらい熱く、そしてそれは高いところから低いところへ自然の法則に任せて、私のことを待っているあの人のところへ流れて行く。

恋というものは人間を若くする。酒と子供は人間を老いさせる

（鉄柱に縛りつける）背筋の先端に大きな関節を一つポコンと露（あら）わに見せていた。

この上ない快楽の刻む苦悶の表情を顔に浮かべ

松田さんの親切から逃げたい

シンイチは指を昆虫の触角のように鋭角にしてサユリの体を撫でた。彼女の吐息がいつのまにか甘くなって来る。

思い出が心をかき乱す