油揚げは脇役だということである。 「パートナーを立てる」という精神を片時も忘れない性格も、人々の好感をさそったようだ。 　自らリーダーシップを取ることなく、周囲との協調を大切にする、というのが油揚げの生き方である。《…略…》油揚げ自体は、それほど味のあるものではない。 　しかしこれが、ひとたび味噌汁の中にひたされると、味噌汁やダシの味を吸いこみ、自己の味と同化させ、嚙みしめたとき、油揚げ独特のあの滋味あふれる味となる。自分を強く主張することを避け、周囲との同化によって自分の持ち味を引き出す。しかもそれが自分の実力以上の力を発揮する結果となっているのである。《…略…》「人の行く裏に道あり、花の山」 　これが油揚げの処世術なのである。

プリプリわかめの歯ごたえと旨みが凝縮した赤だし味噌汁。肉厚のわかめの食感としゃきしゃきの有機ねぎは味噌汁の原点ともいえる組合せ。

味噌は嫌いなほうではない。白よりは赤味噌のコクが性に合っている。

味噌汁を飲むと身体が温まって気持ちが落ち着いた。

朝の膳の上には白い味噌汁に高野豆腐に黒豆がならんでいる。何もかも水っぽい舌ざわりだ。

おでんは郷土料理であり、すべての日本人のおふくろの味。故郷や家族だんらんに直結するおでんは人の心を豊かにする。

食べても食べてもあとを引き、昼に身動きが取れなくなるほど食べても、夕方になるとちゃんとお腹がすいてくる、そんな天ぷら

固くてパキパキしたアジのフライにメリメリと箸の先を食い込ませる

味噌のコクも砂糖の甘みも最初は主張しないのだ。自分は脇役と心得て、控えめに素材に寄り添っている。どんな味だい、はっきりおし、と迫れば際限なく逃げる。逃げられれば追うのが人情。追うほどに深みにはまる。気が付けば味噌どぶどろの底なし沼。

艶やかに映える