呵責

戦っていたんだな、と思った。いいことをすればするほど、才能をのばせばのばすほど。重くのしかかること。生理や性欲や 排泄 みたいに、まったく自分だけの、決して他人と分かち合えない無意識の重み。どんどんふくらんでくる、この世のあらゆる殺人や自殺のもとになっている、暗いエネルギー。

良心が痛い

重苦しいうしろめたさを感じた

騙し続けているという意識は、次第に彼女の自己嫌悪を膨らませていった。

引力に抗する思いで玄関を出た

恋々たる感情が泉のように溢れて来る

胸がえぐられるほどの自責

ゼリー状の憂鬱とでも言うべき、暗澹たるものが胸の中に広がりはじめ、それが自分の頭をも占領するのをひしひしと感じた。　黒い感情が、蝉の内側に充満する。湿って粘着性のあるものにも感じられたが、乾燥して水分のまるでない干涸らびた思いにも感じられた。これは、と蝉は朦朧とする頭で考えていた。これは何だよ。　どろどろとした沼で喘ぐような気持ちで、頭を回転させる。馴染みのない憂鬱さに、戸惑い、怯えた。自分に対する失望や落胆、幻滅に似た、何かに襲われている。阻喪とも放心ともつかない。　しばらくして、まさか、と思い至った。ふいに、まさかこれは、俺の中の罪悪感が溢れかえっているんじゃねえだろうな、と気がついた。

とても喉が渇いているときにコップに注がれた冷たく甘い水を飲み干すのに似た罪悪感

残り多い

鏡の前へ裸で立つ思い

惜しげ

墨汁のようにこみあげて来る悔恨といらだたしさ

（娼婦を買った後悔と性病への不安で）喬（たかし）は堪（たま）らない自己嫌厭（けんお）に堕（お）ちるのだった。生活に打ち込まれた一本の楔（くさび）がどんなところにまで歪（ひずみ）を及ぼして行っているか、彼はそれに行き当るたびに、内面的に汚れている自分を識（し）ってゆくのだった。