驟雨に洗われた、草と水の匂いにする澄み切った大気

硝子よりも冷たく透明な空気

空気がチリチリするほど清潔で溌剌としている

（澄んだ空気の中で）二十分ほど茫然（ぼうぜん）としているうちに何だか水晶で造った御殿のなかに、たった一人住んでるような気になった。しかもその一人住んでる僕のからだが――いやからだばかりじゃない、心も魂もことごとく寒天か何かで製造されたごとく、不思議に透（す）き徹（とお）ってしまって、自分が水晶の御殿の中にいるのだか、自分の腹の中に水晶の御殿があるのだか、わからなくなって来た

「空気がいい故（せい）と見えて、こっちへ来たら不眠なんぞすっかり忘れたようになってしまったよ」

かすかに後ろでアスファルトの砂を踏みしめる音がした。 　振り返ると、背後に見知らぬ男がいた。

あたりの空気が静かに乾いたように明るい

「空気がいい故（せい）と見えて、こっちへ来たら不眠なんぞすっかり忘れたようになってしまったよ」

部屋いっぱいに張り裂けるような殺気が満ちる

さかなのいろをした空気